マネー小説 『Dekai! 出界!』 (7) 第1章(7)
【前回までのあらすじ】
世界的なヘッジ・ファンド『エンタープライズ・K』のCEO、柏木真男は、離婚経験のある38歳の独身。
その名は国際的に知られている。
スイス・チーリッヒの五つ星ホテルに滞在する柏木は、ホテルを出た後、スイス国営放送の第2スタジオで、女性インタビュアーから、世界経済の見通しについて質問を受けていた…。
「あの国は……もう、ダメです」そう言ってから、柏木は何ともいえない顔つきになった。
インタビュアーは彼が自分の言葉に後悔しているのではないかと思ったが、そうではなかった。
柏木は吐き捨てるような調子で続けた。
そこには、怨念のようなものさえ感じさせた。
「あの国は……日本は、完全に間違えてしまった。
バブル経済が崩壊した後の舵取りを大きく間違えたのです。
それは資本主義の根幹に関わる誤りでした」「それは、いったいどういうことでしょうか?」「銀行の弱体化です。
日本政府は時の世論に加担してバブルの責任を銀行に押しつけ、徹底的に銀行の弱体化を図った。
その結果が<失われた20年>です。
少し長くなりますが、よろしいですか?」インタビュアーはタイム・キーパーをちらりと見て確認し、うなずいた。