愛知県の女子高生に聞く、名古屋の恋愛成就スポット「恋の3社めぐり」とは?
「私だけを好きになってほしいのに」「彼の気持ちが変わった気がする」。
率直に本音をぶつけあう彼女たちの表情は、とうてい16、17歳の少女のそれではなく……。
圧倒されつつも、ダンボ耳になってしっかり聞いていた僕は、彼女らのかばんについていた黒っぽいお守りを見て思わず笑ってしまった。
「えんむすび」と書いていたからである。
「えんむすび」……なんと古典的な言葉だろう。
1,000年の昔も今も、色恋の世界は変わらないのだ。
ダイエットやメークではどうしようもないものが恋愛にはあるということを、まだ生まれて16年しかたっていない乙女たちですら知っているのだ。
ほほ笑ましさに思わず気持ちがゆるみ、話しかけてみた。
「それ、どこで買ったの」。
こういう時、一瞬もじもじっとしつつ、きちんと相手に答えるのが名古屋の女子高生のかわいいところだ。
聞くと名古屋市千種(ちくさ)区には、高校生からOLにまで絶大な人気を誇る、恋愛成就の3つの神社があるという。
1人で行くと少しシリアスすぎて怖いので、友達と2、3人で参拝するという彼女たち。
例のお守りはその神社で購入したものだという。
その場所こそ、縁結びの御神木で知られる「城山(しろやま)八幡宮」、恋に効く霊水が湧くという「高牟(たかむ)神社」、そして、かの有名な陰陽師・安部清明ゆかりの「清明神社」の3社だ。
近年、「恋の3社めぐり」というロマンチックな呼び名で、静かなブームとなっているらしい。
この「恋の3社めぐり」。
なんとスタンプ台紙があり、3社のスタンプを集めて城山八幡宮へ郵送すると記念品がもらえるという。
スタンプラリーは各社ワンコインの100円。
それぞれの神社には実際の良縁にまつわるエピソードが多々あり、台紙を持った参拝者が跡を絶たないというから驚きだ。
3社とも千種区内にあることから、直線で結ぶと約10キロ圏内。
このアクセスのよさも人気の理由だろう。
では、少し駆け足で参拝してみよう!スタンプを押す桃色の台紙は、どの神社でも入手可能である。
台紙にはそれぞれの神社の言い伝えや地図などが書かれている。
どの神社からスタートしてもご利益は同じ!3社めぐりに順序はない。
スタンプ台紙には恋愛運上昇の璽(しるし)が押され、そのまま持っていてもお守りになるが、効果は1年間と期限付きだとか。
台紙はウェブサイトからダウンロードもできるが、できれば直接神社で薄いピンク色の台紙をもらって回りたいものだ。
さて、まずは城山八幡宮からスタート!縁結びのご神木「連理木(れんりぼく)」で有名な一社だ。
この城山八幡宮は、かの織田信長の父・信秀が築城した末森城の跡に建てられたという。
縁結び・厄よけ開運・交通安全・必勝守護・家内安全にご利益があるといわれているが、とりわけ有名なのが、連理木という巨木だ。
木のもとで出会った男女が恋愛を成就したという言い伝えが残ることから、縁結びのパワースポットとして多くの女性を惹きつけてきた。
門から向かって左手側、本殿裏手につながる参道を50メートルほど歩くと、うわさのご神木・連理木が登場する。
2本の木が互いに絡みついたような形は、男である筆者から見ると、恋愛成就の乙女の祈りなんてロマンチックなもんじゃない。
強烈なインパクトである。
樹高約15メートル、根周り約5メートル。
いにしえより「連理の契り」「連理の枕」と例えられ、縁結び・夫婦円満のご神木として信仰されているという。
すぐそばに参拝者の絵馬が掲げられているのだが、これがまた濃い内容だ。
「もう一度、あの人と結婚生活をやり直したい」「他の女性にとられたあの人を奪い返したい」……。
濃密かつ切実な元サヤ絵馬が多く、見てはいけないと思いつつも、興味津々見入ってしまった。
こちらの神社では、前述したファミレス女子高校生が持っていた恋愛成就のお守りが売られていた。
その他にも、女心をくすぐる効能つきの品々が多数取りそろえられている。
そのうちのいくつかをご紹介しよう。
地下鉄千種駅4番出口より南東へ徒歩5分で、次のスポットへ到着。
その名も「高牟神社」。
境内には霊水の湧く古井戸(こいど)があり、この水を飲むと「恋が生まれる」と言われている。
その名も「古井(こい)の水」。
笑ってはいけない。
シャレの効いたネーミングに思えるが、その由来は相当に本格的なものだ。
この霊水の歴史は、なんと今から1,800年もの昔にさかのぼる。
かの応神(おうじん)天皇の長寿の祝水として産湯に献上されたという歴史を持ち、現在では、日本名水100選にも選ばれているというありがたい霊水なのだ。
こちらが手水舎の竜の口から出ている“古井の水”。
真夏なのにビリッとした冷たさ。
この水温は年中一定という。
信仰の水である霊水ということから、この水をくみに訪れる人も多く、柄杓(ひしゃく)で左手→右手→口元を清めてから飲むのが作法だと、境内で出会ったご婦人が教えてくれた。
そう。
厳かな気持ちでこのお水をいただきにくる年配客の姿が多いのが、高牟神社の特徴のひとつ。
高牟神社は、「むすび信仰」の神とされる高皇産霊神(たかみむすびのかみ)と神皇産霊神(かみむすびのかみ)を御祭神として祀っている。
「恋の3社めぐり」への参加は、この「むすび信仰」を“縁むすび”とシンプルに捉えた地元の高校生の呼びかけではじまったとか。
境内へ入るなりまず目につくのは、華やかな絵馬。
3社めぐりの影響だろうか、ここでも、女性の想いがテンコ盛りになった絵馬たちで、境内はにぎやかであった。
●information 高牟神社 住所:名古屋市千種区今池1-4-18 いよいよ最後は、映画でも漫画でも今や知らない人はいない、平安朝のスーパースター、安部清明にまつわる清明神社へ。
この神社は、平安時代に活躍した陰陽師・安部清明が晩年住んだといわれる清明山に建てられている。
こじんまりとした境内には、陰陽道で用いたとされる星型の五芒星(ごぼうせい)“清明桔梗紋(ききょうもん)”があしらわれた調度品が数多く存在する。
また、加持祈祷(かじきとう)による「晴明占い」がとても有名だという。
小さな神社にも関わらず、恋愛成就を祈願する参拝者たちが全国から訪れるというから驚く。
また、恋愛成就だけでなく、結婚、開業、受験合格などに御利益があるといわれる。
女性は右側のこま犬、男性は左側のこま犬を触ると恋愛運が上がるという伝承がある。
近寄ってみると、触られすぎてすり減っている感のあるこま犬が、かわいくもちょっぴり哀れである。
●information 清明神社 住所:名古屋市千種区清明山1-6ざっと駆け足で参拝してきた、名古屋市千種区の「恋の3社めぐり」。ネーミングだけを聞くとお手軽な恋愛成就スポットかと思ったが、実際は由緒正しい神社であり、霊験あらたかなパワースポットなのである。
女同士の二人旅はもちろん、ひとり気ままな日帰り旅行でも、名古屋を訪れた際は立ち寄ってほしい。
いずれも入場料は無料。
スタンプをいただいても各100円という、コストパフォーマンスのよい、ありがた~い「恋の3社めぐり」である。
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