見逃せない沖縄の最新アートワールドを、地元の写真家・新垣誠が紹介!
そこで今回、彼らのダイナミックな作品を垣間見れるアートスペースを、沖縄の写真家・新垣誠が紹介する。
天真爛漫(らんまん)で年齢不詳、子どものような笑顔に無邪気なしぐさ。
まるで保育園にでも来たかのような楽しい気持ちにさせてくれる「KYOKOART GALLERY」のオーナーは仲本京子さん。
大手保険会社のキャリアウーマンを経て画家へと転身したのは、30歳を超えてからだった。
作品にはピュアなエネルギーがほとばしる。
「あれ?この子、自分かも」と思うようなキャラが必ず見つかる彼女の「楽園シリーズ」。
今では沖縄の至る所に飾られている。
多様なキャラがお互いを尊敬しながら共存する。
そんなハッピーな彼女の作品は、海外でも人気が高い。
息子のことを「ヤツ」と呼び、黄色いフィアット・バルケッタを乗り回す粋な女性。
そんな仲本さんとの会話が、このギャラリーの楽しみのひとつ。
閑静な古都・首里にあるそのギャラリーのドアをいったん開けると、そこにはなぜか懐かしい空気が漂う。
まるで下校途中に遊びにいったお婆(ばあ)ちゃんの家のような……といったら彼女に失礼かな?沖縄の未来に向けてアートを育てるミッチのアートスペース沖縄アート界の反逆児、ダリル・ミッチェル。
人は親しみを込めて彼のことを「ミッチ」と呼ぶ。
18歳でアメリカ陸軍に入隊。
駐屯先の沖縄に恋をした彼は、退役後沖縄へ移住。
そのミッチが運営するのが「Artspace+Cafe COTONOHA(コトノハ)」だ。
2008年のオープン以来、沖縄のアート・コミュニティーに新たな風を吹き込ませ続けている。
「未来に可能性はある。
でも沖縄では、まだアートを育てる環境が十分じゃないんだ」。
そう話すミッチは今、沖縄の若いアーティストをサポートするため、展示会をはじめとする様々な企画を展開している。
“Pecha-Kucha Night(ペチャクチャ・ナイト)”もそんな企画のひとつだ。
2003年に六本木で始まったこのイベントは現在、世界400余りの都市で行われている。
クリエイターやパトロンをつなぎ、アートビジネスの活性化を図るこのイベントを、ミッチは宜野湾(ぎのわん)市という沖縄の片田舎でやっているのだ。
沖縄本島の南、南城(なんじょう)市でのジャズ・フェスティバルをスタートさせたのも実は彼、ミッチだ。
コスモポリタンな感覚で沖縄のアート・シーンを刺激し続けるミッチ。
宜野湾市を訪れた際は、ぜひミッチに会いに店を訪れてほしい。
本質を見据える深いまなざしを持ち、2シーターのオープンカーを自在に乗り回すオヤジ。
「画廊沖縄」のオーナーは、そんな魅力的な沖縄県民・ウチナーンチュ、上原誠勇さん。
沖縄で最も息の長い個人経営の画廊オーナーだ。
戦後、アメリカ軍のゴミ山をあさり回った少年時代。
「日本復帰」をまたいで沖縄を見つめてきたその瞳に迷いはない。
悟りをひらいた仙人のような軽やかさとリアリティー溢(あふ)れる切実さで、グローバルな課題から沖縄の歴史・社会に至まで、いろんな話を聞かせてくれる。
画廊沖縄で開催される個展や企画展示は、全て「沖縄」というテーマで結びついている。
あらゆる社会の問題にアートが介入すべきだ、と上原さんは言い切る。
眠っている感性に覚醒をもたらし、価値体系の再構築を迫る―そんな企画展からは、ディープでコアな沖縄を感じることができる。
身体化されながらも沈黙する沖縄。
そんな沖縄の声に耳を傾け、埋もれた記憶を可視化していくアートのプロセスを、作家たちとともに見てきた上原さん。
ガジュマルの木に宿る精、レゲエのうねるベース音、繰り返す波のリズム……。
それらのエネルギーがぎゅっと詰まった作品が一堂に会しているのが、画廊沖縄なのである。
「AKARA GALLERY」は、100年建ち続ける建物を作ろうというコンセプトで作られたという。
「AKARA(あから)」とは、「あからーぐゎー」というと、「赤いもの」を意味する。
赤瓦の屋根はガウディの建築のように美しい。
ファッションがありアートがあり、くつろげるカフェまである。
ここには、新垣誠が20年間ずっと愛用している沖縄ファッション・ブランドがある。
その名も「Habu Box(ハブボックス)」。
デザイナーは、同ギャラリーのオーナーでもある名嘉太一さんだ。
オシャレでカッコイイんだけど、沖縄の土や海の香りがするHabu Boxブランド。
沖縄が世界に誇るアーティスト、名嘉睦稔さんの作品もずらりと並んでいて壮観だ。
沖縄を訪れた際にはアートとファッションの融合の楽しさを、ぜひその目で確かめてほしい。
●information新垣誠公式プロフィール 新垣誠facebook【拡大画像を含む完全版はこちら】