長崎県平戸市に伝わる、じりじりする「絶品くじら鍋」を堪能!
筆者は40代だが、子供の頃、くじらの竜田揚げや煮物は、ちょっとしたご馳走(ちそう)だった。
肉のようでいて肉ではない、魚とは絶対的に何かが違う。
くじらの深みのある濃厚な味わいは、独特の魅力だった。
しかし時を経て、グリーンピースをはじめとした海外の捕鯨反対運動をTVで頻繁に見るようになったことで、不思議な罪悪感が植えつけられた。
「そうだったのか!くじらは食べちゃいけない生きものだったんだ!」。
捕鯨反対をとなえる白人たちの血走った目にビビッただけかもしれないが、あの時期、一般家庭の食卓からもスーパーの肉売り場からも鯨肉が消えていたように思う。
「牛も豚も羊もいいのに、どうしてくじらは食べちゃダメなのか?」という疑問を残しながらも。
かくして鯨料理にご無沙汰なこと20年ははやてのように過ぎ去った。
そして40代に入ったつい最近、長崎に住む自称ジャーナリストの友人から「鯨食」の伝統を守り続けている平戸市の「じりじり鍋」の話を聞いたのだ。
彼は一枚の鍋の写真を携帯メールで寄こしてきたのだが、そのウマそうなことったらなかった。
直感的に、これは竜田揚げなんかをはるかに超える絶品に違いないと感じたのは、やっぱり僕が、幼少期に鯨を食べて育ったからだろう。