福岡県北九州で61万人が舌鼓! 「B-1グランプリin 北九州」実食レポート
7回目を迎えた本大会には、両日合計で61万もの来場者を記録。
では、その模様をお伝えしよう。
秋晴れというにふさわしい快晴に恵まれた、大会当日の北九州市小倉北区。
「B-1グランプリin 北九州」は、市中心部を流れる紫川沿いの「リバーサイド会場」、小倉港そばのあさの汐風公園と西日本総合展示場を使った「シーサイド会場」の2会場に、全国から63団体を集めて行われた。
大会の模様をお伝えする前に、まずは「B-1グランプリ」とはなにかを説明しよう。
正式名称は「B級ご当地グルメの祭典! B-1グランプリ」である。
本イベントは2006年の八戸大会(青森県)からスタート。
当初から料理を通して町や地域をPRすることが目的の「まちおこしイベント」というスタンスを貫き、地域活性化を狙いとしてきた。
第1回大会は参加10団体、来場者は1万7,000人であったが、回を追うごとに人気は高まり、イベント規模もスケールアップ。
マスコミの注目度も徐々に上がり、多くの報道陣が毎回駆けつけている。
そんな背景のもと、今年はついに2日間合計で史上最高の61万人もの人が訪れたというわけだ。
さて、会場に目を向けてみよう。
開会式はリバーサイド会場の川沿いに設けられた水上ステージで開催。
午前9時20分、華々しいブラスバンドの演奏、おなじみB-1グランプリのテーマソングが会場を盛り上げる中、本大会会長の北橋健治北九州市長や来賓の小川洋福岡県知事があいさつ。
次いで、出展団体の紹介が始まるとボルテージは上がる一方。
全団体がステージにそろうと熱さも一気にピークを迎えた。
一方、各出展団体のブースでは、午前10時の料理提供開始に向けて準備が進められていた。
各団体のスタッフはそろいのTシャツやコスチュームに身を包み、態勢も万全。
各団体自慢のゆるキャラたちは、早くも道行く来場者に愛嬌(あいきょう)を振りまいている。
バックヤードでは大量の食材をそろえたり、調味料を運んだりとあわただしい。
中には円陣を組んで掛け声をかけ合う団体もあり、みんな気合は十分のようである。すでに調理も始まり、ジュージューとうまそうな音をあげる鉄板。
鼻をくすぐるソースやしょうゆの香り。
食欲のスイッチもオンになり、大勢の来場者が料理提供を今かと待っている。
午前10時。
いよいよ料理提供開始。
料理を出すスタッフは投票用の箸を手渡しながら、我が町のPRも忘れない。
来場者は行ってみたいと思う町にも一膳を投票するシステムなので、当然、スタッフは町のPRにも力が入る。
コスプレで挑んだり、歌を歌ったりする団体があるかと思えば、各地の方言も交えながらのコントや芝居仕立てで町を紹介する団体もある。
熱い思いのパフォーマンスは、ブース前でも繰り広げられる。
快晴に恵まれたためか、正午前になると来場者はますます増え、会場内のメインストリートは通勤ラッシュの電車に乗ったかのよう。
そんな中、リバーサイド会場の広大な芝生広場では、大勢の来場者が手に入れたご当地グルメを楽しんでいる。
来場者に話を聞いてみた。
まずは若い男性3人組。
仕事で北九州市に滞在中という伊藤さんは鳥取県の出身。
故郷の友人2人を呼び寄せてこのイベントを楽しんでいるという。
伊藤さんが食べていたのは、「小倉焼うどん研究所」の小倉焼うどん。
その後、地元鳥取の鳥取とうふちくわ総研があるシーサイド会場に移動する予定だという。
「開催をすごく楽しみにしていました」というのは地元・北九州市内から3世代7名でやって来た臼杵さんご一家。
お目当てのご当地グルメを効率よく手に入れるため、家族で分散して行列に並び、みんなで試食するのだという。
「殿堂入りの富士宮やきそば学会の焼きそばが楽しみ」というおばあさんもイベントを満喫している様子。
「地元とは一風変わった味付けや珍しい料理に出合えるし、日本全国を旅したような気分が味わえるのがいいね」と話してくれた。
そうこうするうちに、場内アナウンスが料理提供終了の午後4時を待たずに終了した団体がある、と告げる。
富士宮やきそば学会。
さすがは殿堂入り団体だ。
反面、4時近くになっても呼び込みの声を静めるどころか、ヒートアップさせる団体も多数あったのが印象的だった。
さて、2日目。
夏が戻ってきたかのような陽気。
アツアツの料理はさぞかし分が悪いだろうと思われたが、どっこいどのブースも長い行列が続き、評判が高い団体の最後尾では45分待ちとか1時間待ちという札も立つ。
シーサイド会場では巨大な総合展示場の一階スペースをフードコートとして開放。
館内のテーブルはすでに午前中から家族連れらで満席だ。
座れなかった人たちは持参したビニールシートを広げて思い思いに地面でくつろぎ、料理に舌鼓を打っている。
ステージ上では各参加団体のPRイベントが行われており、ご当地アイドルの参加やコスチュームでの熱演が繰り広げられていた。
投票終了はこの日の午後3時。
それを待つまでもなく料理提供終了を告げるアナウンスが聞こえ始め、筆者も試食に大わらわ。
もちろん全てを食べることは無理だから入賞団体を予想しながらの試食となるが、できれば入賞団体の味は逃したくないもの。
ここで筆者の印象に残った団体をいくつか紹介しておこう。
まずは岡山県の瀬戸内海に浮かぶ島々、日生(ひなせ)町からやってきた日生カキオコまちづくりの会。
カキが名産とあって、ここの売りはカキのお好み焼き、略してカキオコ。
鉄板上でジュージューと音を立てる生地の上に大粒のカキが惜しげもなく乗せられている。
ひと口いただくと、カキのうまみと香ばしいソースの味、それにほんわか焼き上がった生地がドッキングして、おいしさが口の中を直撃。
お土産にもうひとつ欲しくなった。
今回ぜひ食べてみたかったのが、青森県からやって来た八戸せんべい汁研究所の八戸せんべい汁だ。
出展される料理が歴史的に新しいものが多い中、せんべい汁は当地で200年以上前から食べ継がれてきた。
いったい、どんな味なのか?いただいてみると、しょうゆベースの汁に山盛りの野菜が入り、そこに汁をたっぷり吸ったせんべいが入っている。
せんべいはもっちりしていて程よい弾力があり、とてもうまい。
のぼりに書いてあったアルデンテとはこのことか。
パンチのある味が多いご当地グルメの中にあって、せんべい汁のやさしい味わいはかなり印象に残った。
そして、秋田県の男鹿(おが)やきそばを広める会。
4年前からまちおこしの準備を始めたといい、今回で2回目の出展だ。
担当者に話を聞くと、前大会は男鹿名物なまはげを登場させたものの数が少なくてインパクトに欠けたため、今年は6体も導入。巻き返しを図っているという。
料理は地元に伝わる伝統の調味料「しょっつる」を使った男鹿焼きそばだ。
麺には海藻を練り込むこだわりよう。
見た目もカニツメやエビで彩りを添え、とてもぜいたくだ。
いただいてみると、あっさりした塩味。
ほんのり立ち上がる海の香りに酔いしれるうち、みるみる箸が進み完食してしまった。
それにしても2日目は前日に増しての賑(にぎ)わいようで、午後3時を過ぎても人の波が引かない。
リバーサイド会場はまともに歩けず、人の流れに沿って動かないと移動できないほどだった。
各出展団体の呼び込みやパフォーマンスも、最後の追い込みとばかりに熱を帯び、両会場とも気温以上の熱気に包まれていく。
そして4時、全ての料理が提供終了。
2日間にわたるバトルは終了した。
注目の結果は5時30分からの閉会式で発表される。
それまで立ち詰め、歩き詰めだった筆者は大会を振り返りながら、しばし足を休めることに。
いよいよ閉会式。
式が行われたのはシーサイド会場の屋内ステージだ。
驚くほど大勢の報道陣がすでに撮影場所を確保している。
そこへ提供を終えた出展団体が集まってきた。
料理の提供はないはずなのに、なぜか会場全体にソース系のにおいが漂ってきた。
これも2日間、鉄板などに張り付いて料理を出し続けていたことの証しなのだろう。
やがて、期待と不安が渦巻くなか、入賞10団体の発表が10位から始まった。
10位青森県十和田バラ焼きゼミナール
9位 兵庫県あかし玉子焼ひろめ隊
8位 千葉県熱血!!勝浦タンタンメン船団
7位 岡山県津山ホルモンうどん研究会
6位 福岡県田川ホルモン喰楽部
5位 岡山県日生カキオコまちづくりの会
4位 福島県浪江焼麺太国
ブロンズグランプリ(3位)愛媛県今治焼豚玉子飯世界普及委員会
シルバーグランプリ(2位)長崎県対馬とんちゃん部隊
ゴールドクランプリ(1位)青森県八戸せんべい汁研究所
初出展の福岡県の田川ホルモン喰楽部は6位と大健闘。
昨年に続き4位の福島県浪江町の浪江焼麺太国は、スタッフがいまだ避難区域にとどまるなかでの入賞となり、会場中から温かい拍手が送られた。
ブロンズグランプリは今治焼豚玉子飯世界普及委員会。今回は苦戦かなと感じて心が折れそうになったという代表のあいさつが、大会の苦労を物語っていた。
シルバーグランプリは大会初の離島からの参加、長崎県の対馬とんちゃん部隊。
初出展で堂々2位の快挙を成し遂げた。
そして注目のゴールドグランプリは、青森県八戸せんべい汁研究所。
B-1グランプリ発祥の時から出展を続けてきたが、7回目にしてやっと栄冠を手にすることになった。
この結果には会場中が大きく感動。
盛大な拍手が壇上に送られた。
「もてなす心を忘れずに、ずっとB-1に携わってきてよかった」。
そういう代表の言葉が胸に焼き付いた。
2日間、会場を回って日本各地のいろいろな味や食文化を満喫したが、それにも増して印象に残ったのが、わがまちをPRする出展者の情熱だ。
全員がボランティア。
だけど精いっぱいの笑顔ともてなしの心で愛するまちを紹介し、出展者同士でエールを送り合っていた。
明日からはそれぞれの町で、普段の仕事や生活に戻るのだろうが、みんなキラキラしてかっこよかった。
この姿こそがB-1グランプリの醍醐味(だいごみ)なのだろう。
さて、次回はどんな町がどんな自慢の味をひっ下げてやって来るのか、今から大いに楽しみだ。
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