メルシャン、ブドウ収穫の時間帯の違いが香りに影響を及ぼすことを解明
ワインの品質は「ブドウありき」と言われるように、原料となるブドウの品質の影響が大きい。
また、いくつかのブドウ成分は、栽培環境や生育過程でその含有量に違いがあることが知られており、多くのワイナリーでは収穫のタイミングに細心の注意を払っているという。
近年では、ブドウ栽培にとって比較的温暖な地域では、収穫したブドウが熱くなり品質が低下することを防ぐため、ブドウを冷たい状態で収穫する「夜収穫(ナイトハーベスト)」を行うワイナリーが増加しているとのこと。
同社は、この影響を科学的に明らかにすべく、ワインの香りの中でも”柑橘系アロマ”として知られている「3MH(3メルカプトヘキサノール)」の前駆体の含有量を一例として、植物生理の観点から日周性の影響を検討した。
山梨県甲州市勝沼町のブドウ畑にて、「シャルドネ」、「ソーヴィニヨン・ブラン」、「リースリング」の果粒を1日の中で数時間おきにサンプリングし、前駆体3MHの含有量を比較。
また、早朝収穫と日中収穫のブドウを用いて実際に醸造試験を行った。
研究の結果、ブドウ中の前駆体3MHの含有量は、深夜から早朝にかけて増加し、日中減少する傾向が認められた。
また、前駆体3MHの構成成分であるグルタチオンの量は、前駆体3MHの生成量に対応して増減していた。
実際に、これらのブドウを使ってワインを醸造した場合においても、早朝に収穫したブドウから造ったワインの方が、日中に収穫したブドウから造ったワインと比較してより多くの3MHを含んでいることがわかった。
これらの結果により、前駆体3MHを一例として「夜収穫(ナイトハーベスト)」という収穫方法の科学的有意性について世界で初めて明らかにした。
またこれまでの研究から、ブドウ中の前駆体3MHの含有量は環境ストレスモデルにより変動することもわかっており、これらの知見は、産地ごとの特徴(いわゆるテロワール)の存在理由を科学的根拠を持って解明できる可能性を有しているという。
この研究成果「ブドウ収穫タイミングの違いが前駆体3MH(3mercaptohexan-1-ol precursors)濃度へ与える影響」は、17日にレンブラントホテル大分(大分県大分市)で開催される「ASEV 日本ブドウ・ワイン学会 2012年大会」にて発表される。【拡大画像を含む完全版はこちら】