くり食文化発祥の地、岐阜県の「中津川くりきんとんめぐり」で食べ歩き
くりを裏ごしして砂糖と合わせ、茶巾でくりの形に整えた和菓子だ。
素材といい製法といい形といいシンプルで、 かつくりのうまみをストレートに味わえる「キング・オブ・くり菓子」といえる。
手軽なひと口サイズだが、ぱくっと頬張るのはいかにももったいない。
和菓子としてきちんと食べたい一品である。
栗きんとんは、岐阜県と長野県の県境に位置する岐阜県中津川市で生まれたと言われている。
ここはかつて中山道が通り、木曽路の入り口として栄えた宿場街だ。
京都と江戸の文化が交わり、独自の商業文化が形成されていった。
中津川のある恵那(えな)地方は水が豊かで日当たりが良好と、くりの生育に適した気候条件が整っている。
当時は天然の山くりしか入手できなかったというが、大粒で甘さののったくりが名物だった。
宿場で提供されるくり料理が旅人に評判になり、全国に知れ渡ったという。
また、江戸時代の後期には商人たちの間で茶の湯が盛んになり、それにつれて和菓子も発展していったそうだ。
そんなバックグラウンドを聞けば、くりきんとんが中津川で誕生したということにもうなずける。
そして、諸説あるものの、くりきんとんの元祖は「すや本店」と言われているらしい。
この「すや本店」を筆頭に、中津川には数多くの和菓子店でくりきんとんが作られている。
ちなみに、中津川駅前の中央ロータリーには「くりきんとん発祥の地」の石碑があり、毎年9月9日になると祈願祭がおごそかにとり行われ、くりきんとんが無料配布される。
そして、祈願祭を皮切りに、中津川の一番忙しいシーズンが始まる。
多くの観光客が「くりきんとんめぐり」を目当てに町に押し寄せるのだ。
この「きんとんフィーバー」 に沸く中津川の現地レポートを敢行した! 名古屋からのゆるり電車旅。
中津川駅に降り立ったら、まずは駅前の「にぎわい交流館」でパンフレットを入手しよう。
市内の案内マップが店めぐりに便利だ。
中津川は坂道が多いけれど、無料でレンタルできる電動アシスト自転車が用意されているという至れりつくせりっぷり。
軽快にペダルをこぎ出し、いざ、くりきんとんめぐりにGO! まずは口慣らしに、駅前ロータリー周辺にある「信玄堂」「川上屋」でくりきんとんをゲット。チョット行儀はよろしくないが、立ったまま口に頬張る。
ペットボトルの熱いお茶をひと飲み。
きんとん特有の柔らかな甘さとお茶の渋味が渾然一体になり、この和のコンビネーションが実においしい。
そのままスイスイ南下すると、くりきんとん発祥の地として名高い「すや本店」が見えてくる。
ちなみにこの店、ユーミンの長年の親友のご実家だそうで、ユーミンファンの聖地としても知られている。
「生くりと砂糖しか使わないこのお菓子は、素朴ながら口にするたびいつも感動します」とユーミンは言ったそうだ。
案の定、店の前には行列……。
でもスイスイ買えるから大丈夫!老舗の味は、ほのかなくりの細かな粒までウマイと感じさせるもの。
「ほっこり」というコトバがこれほど当てはまるとは、さすがなり。
この店の一角から東西にのびる道が、旧中山道だ。
古い宿場街の風情が今も残り、その中を自転車でスイスイ走るのは実に気持ちのいいもの。
こんな感じで半日ぶらぶらと中津川で過ごした今回のレポート旅。
さすがに14軒全部を回ることはできなかったけれど、このシーズンだけの味わいをトコトン堪能できて大満足して中津川を後にした。
くりきんとんはシンプルな分だけ、ごまかしがきかない和菓子だ。
そして、意外なほど店の個性がお菓子の表情に出ている。
ぜひその違いを楽しんで、お気に入りの1店を見つけてほしい。
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