不動産アドバイザーに聞く。「ロフトがある部屋」って本当にいいの?
写真で見ると、おしゃれ、ひと部屋多いように見える、使いやすそうで、ああしたいこうしたいと想像がふくらみます。
ロフト付き物件の魅力などについて、「快適で安全な一人暮らし」をモットーに活躍する不動産アドバイザーの穂積啓子さんにお話を伺いました。
■「小屋裏物置等」が秘密基地感覚で使える
――ロフトはどうしてあんなに天井が低いのでしょうか。
穂積さん:子どもの習い事をきっかけにピアノを購入したAさん。
契約書に「ピアノ不可」とは書いていなかったため、当然OKだと思ったと言います。
数日後、管理会社から、「階下の住人から『ピアノの音がうるさい』と苦情が出ています」という連絡が……。
この場合、演奏してはいけないのでしょうか。
穂積さん:マンションでのロフトとは、戸建の場合の天井裏の部屋と同様で、「小屋裏物置等」と扱われます。
建築関連の法令で天井高が1.4m以下、設置する階の床面積の2分の1などが基準ですが、採光・換気の基準を満たしていないので居室とは認められません。
そのためロフトは、物置・納戸などの収納スペースというのが本質です。
入居前の重要事項説明でもそう説明されます。
――ロフトの魅力、上手な使い方、メリットを教えてください。
穂積さん:建築法での天井高の制限をうまく利用して、隠れ家や秘密基地のような感覚で楽しめることが一番ではないでしょうか。
一軒家では子ども部屋にされる方がいますが、子どもはロフトが大好きです。
はしごの昇り降りの動作から、人に知られていない場所に潜り込む感覚や自分の空間を持った気分を味わえるのでしょう。
それがそのまま大人になっても感じられるのがロフトのある部屋なのだと思います。
また、部屋全体の天井が高くなるので、開放感がある、空間が広く感じる、おしゃれに見えるなど、マイルームの楽しみ方が増えます。
具体的な使い方を入居者の方に聞くと、「日常生活の場との区切りを生かし、工房的に使っている」、「集中したい趣味に没頭できるスペース」、「小粋な書斎にした」、「オーディオルームにした」、「プラレール(鉄道模型)を買って常設した」、「ほどよく引きこもれる」、「間接照明に凝って、おしゃれな寝室を作ってみた」などという方法から、「部屋に物置がプラスされて物理的にお得な感じがある」、「憧れのロフトスタイルを手に入れることができたという充足感を得た」という満足度を伝える人もいました。――充足感を得るというのはうれしいですが、デメリットもあるのでしょうか。
穂積さん:最も多い意見は、「夏はかなり暑い」ということです。
熱気が上がってくること、換気がないので部屋とは温度が2~5度ぐらい違うことがあります。
特に、マンションの最上階や、屋根に近い部屋の場合は相当な暑さでしょう。
逆に、冬は暖かいわけです。
「春秋冬はロフトで寝て、夏は下で寝るようにしてインテリアを変えたり、それなりに楽しんでいる」という声が多いです。
ほかに、「天井が低すぎて頭をよく打つ」、「冷房代が高くつく」、「はしごから落ちた」、「立てないから掃除がしにくい」、「家賃が割高」などの声があります。
――家賃は高いのでしょうか。
穂積さん:ロフト付きの物件が珍しいころは、同じ間取りでも一般の部屋より家賃が1万円程度高かったのですが、今は5千円程度の割高と落ち着いてきました。
一般の部屋とあまり変わらない例も増えています。
――内見のときの注意点はありますか。
穂積さん:必ず自分の足で2~3回ははしごを昇り降りして、スムーズに移動できるか、ロフトスペースでは自分はどんな姿勢になるか、デスクを置くと座れそうか、棚などスペースを有効に使って配置できそうかなどを体感してください。
そのためにはメジャーを持参し、左右の寸法に加えて高さも正しく測っておくようにします。
後で決断するときの役に立つでしょう。
――ありがとうございました。
狭いスペースながら、ロフトは知恵次第で夢がある空間を作れそうな気がしてきました。
物置が増えたというだけではない、幅広い楽しみ方を考えたいものです。
監修:穂積啓子氏
「安全で快適な一人暮らし」、「女性の安全な暮らし」をテーマとして活動する不動産アドバイザー。
宅地建物取引主任者。
その活躍ぶりは、コミックエッセイ『不動産屋は見た!~部屋探しのマル秘テク、教えます』(原作・文:朝日奈ゆか、漫画:東條さち子東京書籍1,155円)に描かれました。
同書の主人公「善良なる大阪の不動産屋さん」は、穂積氏がモデルです。
(岩田なつき/ユンブル)
【拡大画像を含む完全版はこちら】