【コブスくんのモテ男道!】もうかってまっか? 正しい大阪弁講座
東京で飲み会に参加すると、周囲の人たちがなにやらケッタイな大阪弁になって行きます……。そう、ワタシは生まれも育ちも大阪。どうやら大阪弁は周りに伝染するようです、それも中途半端に。
ということで、『阪神タイガースファン名言珍言集~幸せのヒミツ』(中経出版)の著者で、大阪弁に詳しい、阪神タイガース私設応援団・猛虎魂会(もうこたましいかい)会長・阪神ファン研究家の朝日奈ゆかさんに正しい大阪弁を教えていただきました。
■基礎編――あいさつ、人の名前の呼び方
「まずは基本のキですが、みなさん、あいさつに関してだけは、ことばの意味や受け応えについて正しく理解しておきましょう。特に返答を間違うと相手が困ります」と朝日奈さん。
<あいさつ>
「まいど、おおきに」→訳「こんにちは、ありがとう」
使い方「取引先で、オフィスで、学校で、街で、友人知人とのあいさつの定番です。『Hello!』の意味なので、初めて会った人でも『まいど』は使えます。
別れ際にも使います。
電話、メールの出だしや結語としても使用OK。手紙では、『拝啓』や『敬具』の代わりにもなります。
また、商談でたとえ取引が成立しなくても、特に何も買ってもらわなくても、『おおきに』と言いましょう。相手に対する感謝の意であり、イヤミではありません。
阪神の外国人選手・マートンが、ヒーローインタビューで最後にこれを言って大ウケ、翌日のスポーツ新聞の大見出しになっていました。外国人や関西以外の人が一番まねしやすいフレーズです。大きな声で元気に、照れずに言うのがコツです」(朝日奈さん)
「もうかってまっか?」、「ぼちぼちでんなぁ」→訳「元気ですか?」、「はい、元気です」
使い方「『まいど、おおきに』に続いて使うあいさつで、『How do you do? I’m fine, thank you.』の意味です。
『もうかってまっか?』と聞かれて、『それがこのごろ赤字続きで……』とか、『経費節減でどうのこうの』とか、『今日の売り上げは100万円です』だとか、細かい事情を話さないようにしましょう。
『ぼちぼちでんなぁ』は、たとえもうかって笑いが止まらないときでも、赤貧のドン底であっても、こう答えるのが大阪弁の妙です。ただし、中級以上になると、『えらいもうかって、カネ余って困ってまんねん』とか『1円ものうなってしもて、きつねうどんも食べれまへんわ』とか、ツッコミで返す人もいますが、これはウケねらいです。
ウケるには、『相手の意表をつく』のがポイントとなります。
ほかのバージョンとして、相手が女性の場合、『もうかってまっか?』の代わりに、『べっぴんさんですなあ』が使えます。
言われた女性は、『ぼちぼちですわ』と答えます。本気にすると、相手が困ります」(朝日奈さん)
<名前の呼び方>「~はん」、「~っさん」、「~っつあん」、「~やん」のパターンがあります。朝日奈さんのコメントとともに呼称の例を紹介します。
吉田さん→吉田はん、岩田さん→岩田はん、玲子さん→玲子はん、真弓さん→真弓はんなど
「『はん』は敬称です。京都弁でも使用しますが、京都弁の『~はん』はニュアンスは柔らかいですが、人との親密さにおいて距離があります。
大阪弁はコテコテの呼び方で相手との距離を近く感じさせます」
吉田さん→よっさん、森さん→もっさん、林さん→はやっさん、靖さん→やっさんなど「『音便化』です。『前の音が○○のとき、音便となる』という文法はありません。呼びやすい人を呼んでください」
金本さん→かねもっつぁん、谷口さん→たにぐっつぁん、小松さん→こまっつぁん、大仏さん→だいぶっつぁん、応用で、関本さん→せっきゃんなど
「『音便化』の応用です。上方落語の登場人物に多い呼称です。親しい人を呼ぶときに使います。取引先の人には、2~3回会ってから呼ぶと親しくなれるかもしれません。
呼称でなくても、『ごちそうさま→ごっつぁん』という言い回しもあります」
藤川さん→ふじやん、清水さん→しみやん、久仁子さん→くにやん、茂君→しげやんなど
「『やん』は、家族、親戚、友人、ご近所さんら、親しい人に使いましょう。ポチ→ポチやんなど、ペットにもOK」
朝日奈さんからのアドバイス
「語尾の変化にルールはありません。大阪人は、小さいときから誰かれとなくこう呼びあって、自分もどれかで呼ばれたことがあって、これらの語尾に慣れているだけです。取りあえず、周囲の人の名前をかたっぱしから、呼びやすい形で呼んでみましょう」
■語尾がポイント――がな、でっせ、や
朝日奈さん「大阪弁は語尾に特徴があります。語尾を理解すると、大阪弁を使うことがおもしろくなります。まずは例文を復唱しましょう。語尾変化がつかめてくるはずです。発音、イントネーションは、大阪の芸人が出演するバラエティ番組などを見て、まねてください」
●「がな」
明石家さんまさんをはじめ、関西出身の芸人が『でんがな・まんがな』とよく使っていますが、実はていねい語です。
『です』→『でんねん』→『でんがな』、『ます』→『まんねん』→『まんがな』と、変形していったわけです。
例文「そうでんがな」(そうです)、「ええがな」(良いですねえ)、「知りまへんがな」(知らないです)
「これ、なんぼしまんねん」(これ、いくらですか)
「100万円でんねん」(100万円です)
「そら、高いもんでんがな」(ええっ、それは高いですね)
「ちゃいまんがな、冗談でんがな」(違いますよ、冗談です)
●「でっせ」、「や」
おおまかには、「~です」という意味です。親しい人の間で使いますが、特に「や」は、大阪弁のいたるところで使う語尾です。
例文
「お客さんでっせ」(お客さんですよ)、「これ、お得でっせ」(これ、お得ですよ)、「怒らんとってや」(怒らないでね)、「勉強しぃや」(勉強してね)、「ほな、そうしときや」(では、そうしてね)、「こけなや」(ころばないでね)
■阪神タイガース応援編
ではここで、朝日奈さんに、阪神ファンが阪神タイガースを応援するときに使用する大阪弁を、標準語訳つきで紹介していただきましょう。日常の会話でも使っている人はいますが、レベルは中級以上です。
「うわっ、こらもうアカン、いてこまされた!」(ああ、もうだめ、絶対絶命です)
「おのれ、何さらしとんねん。誰の金でくわしてもろてるとおもとんのじゃ」(君、何をしているのですか。誰にお給料をもらっていると思っているのですか)
「往生際(おうじょうぎわ)の悪いことすな!」(あきらめの悪いことをしないで)
「びびらしたろか」(おどろかしますよ)
「どこ目ぇつけとるんじゃ、われ、前みんかい、前!」(どこを見ているのですか、君、前を見なさい、前を)
「えらいぎょうさん、点とられとるがな、どないなっとんねん」(たくさん点をとられています、いったいどうなっているのでしょうか)
「アホなことすな!」(バカなことをしないで)
「もうワシのことはほっといてんか」(もう、僕のことは放っておいてください)
「ほりこまんかい!」(ホームランを打ってください)
「どないせえっちゅうねん」(どうしろと言うのですか)
「ようやっと、ツキが回ってきたで~」(ようやく、運が巡ってきました)
「優勝や言うとんで、仕事どころとちゃうやろ!」(優勝するらしいですよ。
仕事をしている場合ではありません)
「しんぼうせんかい!」(がまんしなさい)
「阪神電車に乗って、はよいね!」(阪神電車に乗って、早く帰りなさい)
「弱いもん(阪神のこと)いじめたおしてなんやおもろいか?」(弱いものいじめをして、何がおもしろいのですか)
「えらい強うてすんませんな~」(大変強くてすみませんね)
朝日奈さんは、
「よい子のみなさん、おもしろいからといってむやみにまねをしないようにしましょう。
大人のみなさん、これらの応援(?)は、阪神ファンが阪神タイガースに向かって言うことばです。他球団ファンが言うと、阪神ファンにボコボコにされる恐れがあります。子どもの悪口を言ってもいいのは親だけ、というのと同じ理屈です」と注意します。
最後に、勉強法についてこう言います。
「ここに記した太字を何度も繰り返し音読し、コテコテの大阪弁を話す友人をつかまえては、日々、会話をしてください。そして、大阪に来る、遊ぶ、暮らす、甲子園球場に阪神の試合を見に行く、特にライトスタンド(1塁側外野席)の真ん中あたりに座ってネイティブ大阪弁を学び、使いまくることが大阪弁習得の一番の近道です」(朝日奈さん)
甲子園球場では、使い間違っても、周囲にいる見知らぬ大阪の人たちが「なんでやねん、ちゃいまっせ」(なんということでしょう。まちがっていますよ)とツッコミしつつ、正しい大阪弁を教えてくれることでしょう。
監修:朝日奈ゆか氏。『阪神タイガースファン名言珍言集~幸せのヒミツ』(猛虎魂会中経出版1,000円)の著者で、阪神ファン研究家としてメディアなどで活躍中。編集者。文筆家。株式会社ユンブル代表取締役。
(海野愛子/ユンブル)
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