【コブスくんのモテ男道!】検証! 部屋探し術。ゼロゼロ物件のここに注意
ひとり暮らしを始めたい、通勤に便利な沿線に引っ越しをしたいと思っても、敷金礼金の初期費用を考えるとそう簡単には実行できません。そこで、敷金ゼロ円、礼金ゼロ円のいわゆる「ゼロゼロ物件」をチェックすることも多いのではないでしょうか。
でも、敷金礼金が数十万円になる物件が多い中、なぜゼロゼロが成立するのでしょうか。もしやトラブルでも……と身構えてしまうこともあります。
ここで、「女性の安全な暮らし」をモットーに大阪市中央区を拠点に活躍する不動産アドバイザー・穂積啓子氏に、ゼロゼロ物件選びの注意点についてうかがいました。
■敷金礼金以外の加算費用に注意
――なぜ敷金や礼金がゼロの物件があるのでしょうか。
穂積さん「これが今、流行している背景のひとつには、借り手市場ということがあげられます。
バブル期にどんどんアパートやマンションが建設されたのは周知の事実ですが、不況になった今でも不労収入(家賃収入)で安定した生活を送りたいとあこがれる人が多く、マンションの建設数は増えています。
そのため、特に設備などが古いマンションは空き室率が高い状態です。
そこで、敷金礼金をゼロにしてでも早く誰かに部屋を貸して、空き室を減らしたいと考える大家さんが増えたのです」
――ではゼロゼロ物件は借り手にとって、お得な物件ということですか。
穂積さん「いいえ、必ずしもそうとは言えません。ゼロゼロ物件には気を付けないといけないこともあります。例えば、敷金礼金がゼロでも、敷金礼金以外の費用が請求されるところにゼロゼロ物件のカラクリがあります。
敷金、礼金はゼロでも、契約時には仲介手数料、前家賃、日割り家賃、火災保険料、共益費も必要です。本来は大家さんが負担すべき鍵の交換費用数万円を借り主が負担したり、短期で退去した場合、家賃の1~2カ月分を違約金として請求される場合などがあります。
礼金は本来、部屋を退去するときに、経年による破損や汚損(おそん)部分の原状回復費用にあてられるものですが、ゼロゼロ物件の場合、退去するときは部屋の原状回復費用を実費で請求されることも多いので、想定外の出費がかかることがあるんです。
さらに、ゼロゼロ物件では保証人のほかに、保証会社に入ることを条件にしている場合もあります。その保証料は会社によって異なりますが、初回に家賃と共益費の50%、1年ごとの契約更新料が10,000円~20,000円というシステムが一般的です」
■契約前に「重要事項説明」をチェック
――ゼロゼロ物件を借りるときの注意点を教えてください。
穂積さん「不動産仲介業者は、借り主に対して賃貸借契約締結前に『重要事項説明』を行うことが法律で義務付けられています。この内容は書面によるもので、契約条件のほかに、原状回復費用の負担区分、登記簿事項、違約金条項、部屋の用途、居住人数、ペットは可かどうかまで、こと細かに書かれています。
特に敷金礼金がゼロの物件では、『退去するときの原状回復を誰がするか』を必ずチェックし、それについて納得してから契約をするようにしてください。もし、それらの取り決めについて触れていなかったり、表現があいまいだったりした場合、また、これ以外でも納得がいかないときには契約を考え直すことが大切だと思います」(穂積さん)。
――ゼロゼロ物件の大家さんは、入居者をどう見ているのでしょう。
穂積さん「ゼロゼロ物件は初期費用が通常よりも少なくて済むので、『家賃は絶対に滞納しない』、『部屋を壊さずキレイに使う自信がある』という入居者には魅力的なシステムです。
ただし大家さんからすると、敷金は家賃を滞納されたときに補てんする役割でもあります。ゼロゼロで部屋を貸す場合はその預かり金となる敷金を受け取れないため、『この人は毎月きちんと家賃を支払ってくれるだろうか』と滞納されることを常に心配しなくてはなりません。
ネットなどでよくうわさになるゼロゼロ物件のトラブルとして、『家賃を3日滞納したら、勝手に鍵を替えられて部屋を追い出された』という話がありますが、これは人道的には許されることではないでしょう。
しかし、貸し主側の立場からすれば、家賃滞納は迷惑行為です。『家賃を滞納する入居者』に対しては、即刻督促をすることになります。
ゼロゼロ物件を借りるにしても、財布が苦しいときなど、いざというときのために1~2カ月分の家賃代金くらいは貯蓄しておいたほうが安心でしょう」と穂積さんは続けます。
ゼロゼロだからといって、貯金もゼロゼロではいざというときに困るというわけです。預金通帳のけた数のゼロを増やすことも大切かもしれません。
監修:穂積啓子氏。その活躍ぶりは、コミックエッセイ『不動産屋は見た!~部屋探しのマル秘テク、教えます』(原作・文:朝日奈ゆか、漫画:東條さち子東京書籍1,155円)に描かれました。同書の主人公「善良なる大阪の不動産屋さん」は、穂積氏がモデルです。
(下関崇子/ユンブル)
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