【コブスくんのモテ男道!】コミュニケーション講師に聞く。間違いがちな敬語マナー
取引先との商談などで、自分では丁寧に話していたつもりが、後で同席していた上司に「あの言葉遣いは大変失礼だから、以後気を付けるように」と、指摘された経験はありませんか。
「正しいと思い込んで使っている敬語が、実は間違っていることも多く見受けられます」というビジネスコミュニケーション講師の大嶋利佳さんに、間違いがちな敬語マナーについてうかがいました。
■二重敬語の間違い
「おっしゃられる」、「ご覧になられる」、「お越しになられる」
この3つは、よく聞く間違いですが、どこが正しくないか分かりますか?
「普通の動詞を敬語にする方法は、2種類あります。1つは語尾に『れる・られる』を付ける方法。もう1つは、別の言葉に言い換える方法です」と大嶋さん。
例えば、「言う」という言葉を敬語にする場合は、「言われる」か「おっしゃる」というのが正しい使い方です。ですから、「おっしゃる」という敬語に、さらに敬語表現の「られる」を付けて「おっしゃられる」というのは間違いです。
「ご覧になられる」は、「ご覧になる」、「お越しになられる」は「お越しになる」が正しい敬語です。
■謙譲語の誤用
「社長は事務所におられますか?」、「何時にまいられますか?」
「謙譲語とは自分の動作をへりくだるときに使う言葉です。『おる』は『居る』の謙譲語、『まいる』は『行く』の謙譲語ですから、相手の動作に対して使うのは間違いです。
『おられる』というのは、謙譲語に敬語表現の「れる」がついているので、敬語のような印象があり、最近はかなり普及している表現です。正しいと思って使っている人が多いようですが、自分から進んで使わないように心がけたい言葉ですね」(大嶋さん)
どちらも正しくは、「いらっしゃいますか?」です。
■へりくだったつもりでも、実は間違い
「その件について、私は存じ上げません」、「お客さまのご意見は必ず上司に申し上げておきます」
「『存じ上げる』というのは『知る』の謙譲語ですから、一見、正しいように聞こえますが、『上げる』というのは、人に対して敬意を払って持ち上げることです。知っている対象が『その件』であれば、『存じません』が正しい言い方です。
『申し上げる』は、上司に向かって『申し上げたいことがございます』なら正しいですが、この場合はお客さまに敬意を払わなければいけないので、『上司に申し伝えておきます』と言いましょう」(大嶋さん)
■身内への敬称の間違い
「うちの奥さん」、「私のだんなさんのおかあさん」、「うちの社長」
これもよく聞く言い方ですが、「自分の家族や身内に敬語を使うのは間違いです」と大嶋さん。
正しくは、「妻」、「夫の母」、「弊社の社長」などですが、「最近では、家や身内で1単位という認識が薄れ、家族でも他人行儀になっていることがあります。
そのため、家族同士でもへりくだるようになったのでは」と大嶋さんは分析します。
「奥さんが大切な人であるのは分かりますが、『今日、奥さんの誕生日だから、早く帰らないと』のように言う人が増えていますが、50代、60代の方が聞いたら、失笑されます」(大嶋さん)
ユーモアの範囲だと分かっての使い方であればOKでしょうが、上司や目上の人との会話などで使ってしまうのはNGです。
■ビジネス用語のつもりが失礼に
(お客さまに向かって)「了解しました」、「わが社といたしましては」
「了解」が間違い!?と驚く人も多いのではないでしょうか。
「『了解』は、相手の事情を理解して、認める・許すという意味なので、上から目線になります。上司やお客さまに対して使う言葉ではありません」(大嶋さん)
また、「『わが社』、『弊社』、『当社』の区別がついていない人が多い」という大嶋さん。「『わが社』はプライドを持っていう言葉で、社長が『わが社一団となって不況を乗り越えよう』など、社内で叱咤激励(しったげきれい)するときに使います。
『弊社』は最もへりくだっている言葉で、社外のお客さまに対して使う言葉です。『当社』は客観性が高い言葉なので、プレゼン資料や商品パッケージなどのデータで『当社比』のように使います」(大嶋さん)
■敬語のつもりで実は間違い
「こちらが○○の方になります」、「○○でよろしかったでしょうか」
コンビニやファストフードなどの接客業でよく聞く言葉ですが、「正しくは、『○○です』、『○○でよろしいですか』です」と大嶋さん。
「敬語には婉曲表現というものがあり、『~してください』を『~してくださいませんか』のように語尾をやわらげる言い方があります。そのため、『~の方』や『よろしかったでしょうか』を、遠回しの表現だと勘違いして使う人が増えたのではないでしょうか」(大嶋さん)
さらに大嶋さんは、次のように続けます。「敬語を正しく使うことは、自分のステータスを上げることにもつながります。相手が目上や偉い人だから敬語で話すのではなく、『自分に品位があり、教養のある人間だから敬語を使うのだ』と考えてください」
「周りの人が使っているから……」と同調し、間違った敬語を使うこともありましたが、これを機に、正しく美しい言葉遣いを身に付け、少しでも品性のステップアップを目指したいと思います。
監修:大嶋利佳氏。会社勤務、ビジネス専門学校教員を経て研修講師として起業独立。ビジネスコミュニケーション全般の研修、講演を幅広く提供している。執筆分野でも活動し、30冊以上のビジネス書籍を刊行。
最新刊は『ビジネス電話のマナー&技術』(産業能率大学)。本を書きたい人のための『出版実現講座』(通信制)も主宰している。http://www.ohshima-rika.info
(下関崇子/ユンブル)
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