【コブスくんの使えそうな仕事術】専門医に聞く。ラーメンを食べると鼻水が出るのはなぜ?
ラーメンやうどんを食べたり、寒い場所に行くと鼻水ズルズル……誰しも経験があるでしょう。鼻が弱い人ならデートで温かいものを食べたくない、という人もいます。
なぜそうなるのでしょうか。また、鼻を鍛えることはできるのでしょうか。
耳鼻咽喉科専門医でとおやまクリニック院長の遠山祐司先生にお尋ねしました。
■上品にそっと食べると鼻水が出にくい
――ラーメンやうどんを食べると、鼻水が出るのはなぜでしょうか?
遠山先生鼻には、「空気を体内に取り込む」という機能があります。しかも、できるだけ体温と同じ程度の温度にして肺に送るように働いています。
ラーメンを食べるときは、鼻から急に湯気=熱い空気を吸収することになるでしょう。
それをそのまま肺に送り込まないように、吸気をいったん冷やそうとして鼻水を出します。つまり、防御反応を起こしているわけです。
――なるほど。では、寒い日に外でマラソンやスキーをすると鼻水が出るのも同じ理屈でしょうか。
遠山先生そうです。冷たい空気が入ってくると鼻がそれに湿り気を与え、体温に近い温度にしようとします。そのために、鼻は毛細血管を開いて血流を促します。すると、鼻水の分泌も促進されて鼻水が普段より多めに出ます。
鼻粘膜が弱い人、鼻炎がある人はその傾向が強いようです。
時々、「冷たい外気に触れて鼻が出た。風邪では?」と病院に来られることがありますが、外気が原因の場合は、室内に移動すると鼻水は止まるので風邪ではないと気付くはずです。
――デートや仕事での大事な会食などのとき、鼻水を出にくくする方法はありますか。
遠山先生一度にたくさんの湯気を鼻に近づけないことです。ラーメンやうどん、鍋物など温かい料理を一気にガツガツ食べようとすると、湯気が一斉に鼻から入ろうとして鼻水も大量に出てきます。
それに、鼻水はにおいにも敏感に反応します。こしょうなどの刺激が強い香辛料をたくさんふるとくしゃみが出るでしょう。
あれは、鼻が香辛料を異物と感じ取って、刺激が入り込むのを防いでいるのです。
上品にそっと食べるほうが鼻水は出ません。
■風邪と鼻炎では対処が違う
――なんだか分かりやすい理屈ですね。風邪や花粉症で鼻水が出るのも同じですか。遠山先生それはまた別です。風邪や感染症では、吸気の温度は関係がありませんが、体に侵入しようとする、あるいは体に侵入したウイルスや花粉を追い出そうとして鼻水を出しています。くしゃみやせきも同様に、ウイルスを追い出そうと体が戦っているのです。これらは、ウイルスから体を守る、あるいは花粉を排除しようとする生体の防御反応です。
――風邪と、鼻炎のときでは、鼻の状態は違うのでしょうか。
遠山先生診察では、患者さんの鼻の穴を器具で少し広げて見ることになります。風邪や感染症の場合は、鼻の粘膜に発赤(ほっせき)があります。炎症を起こしている状態ですから、温めすぎたり鼻をかみすぎたりと強い刺激を与えるのはよくありません。
アレルギー性鼻炎の場合は、粘膜が蒼白(そうはく)で、真っ白になっている場合もあります。血行が悪くなっているため、体温と同じくらいの温かい蒸気を吸入してみたり、蒸しタオルで鼻をおおって、ゆっくり呼吸しながら鼻を温めてあげると、鼻づまりや鼻水が改善されることもあります。
――では、風邪をひいたときに鼻がつまるのはどうしてですか。
遠山先生一つは、粘膜が炎症を起こして腫れ、空気の通り道を狭めてしまうから。
もう一つは、血管や鼻水の腺からしみだした分泌液が鼻の奥にたまってつまってしまうからです。
鼻がつまると、鼻の中の粘膜は炎症をおこしてうっ血しています。耳鼻咽喉科で‘ネブライザー’という療法でお薬を吸入していただくのがベストですが、できなければ自宅で、体温くらいの生理食塩水の蒸気を鼻から吸って鼻から吐く、つまり鼻呼吸を3分ほど繰り返してください。つまった粘液をやわらかくして、排せつしやすくし、鼻粘膜の炎症・うっ血を抑えるのです。一気に治りはしませんが、改善を早める一つの手段にはなるでしょう。
■鼻を鍛えるには、生活習慣が大事
――鼻を鍛える方法はありますか。
遠山先生まず、鼻は体調や環境の変化を感知してくれる大切な器官だと考えてください。ですから、「鼻を鍛える=鼻水を出さないようにする」という考えは間違いです。
「鼻水よ、今すぐに出ろ」とか、「鼻づまりよ、治れ」と思ってもその通りにはならないでしょう。鼻の働きは自律神経によってコントロールされているからです。つまり、鼻炎やアレルギー性鼻炎で困っている人は、自律神経を安定させることを考えてください。そのためには、睡眠をはじめとする生活習慣を規則正しく整え、できるだけストレスがない日々を送ることが大事なんです。特に、鼻が弱い人は鼻だけを鍛えようとはせず、生活習慣を見直すことで鼻の力をアップすることを考えましょう。
――ありがとうございました。
鼻水が出たり鼻がつまるのはうっとうしいことですが、実は体調悪化を防いだり守ったりする人体の機能だったのです。こういう知識があると、鼻水や鼻づまりにも愛着が持てるかも!?しれません。
監修:遠山祐司氏。耳鼻咽喉科・気管食道科専門医。医学博士。とおやま耳鼻咽喉科院長。
とおやま耳鼻咽喉科TEL: 06-6923-4187大阪市都島区御幸町1-9-1地下鉄谷町線都島駅から徒歩7分http://www.is-is.org/tohyamajibika/
(藤井空/ユンブル)
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