【エンタメCOBS】専門家に聞いた! 自転車通勤を安全に楽しむススメ
エコで快適な自転車は、今ちょっとしたブーム。しかし一方で、危険な運転が問題になっています。そこで今回は、自転車で通勤する人を応援するサイト「TOKYOツーキニスト」管理人の内海さんにお話を伺いました。
■自転車の安全徹底、なぜ今?
――最近テレビで、自転車がよく取り上げられていますよね?
10月25日、警察庁から「自転車の車道走行を徹底するように」という通達がありました。今までも、自転車は車道が原則で歩道の通行は例外でしたが、ほとんど知られていなかったんです。
自転車の歩道通行が認められたのは、1970年。高度経済成長に伴いクルマとの交通事故も増えていたため、邪魔なものは歩道に上げてしまえという発想だったのです。「基本は車道だけど歩道でもいい」という中途半端な状態が、ずっと続いていました。
そんな中、今年は震災の影響で自転車通勤が増え、自転車と歩行者の事故がさらに増えて問題になっていました。さらに、2002年に当時の小泉首相がかかげた「10年で交通事故死を半減」という目標の期限が迫っていたこともあり、今回の通達に至ったようです。
■意外と知られていないNG項目は時代に合っていないものも
――「自転車は車道」のほかにも、意外な法律はありますか。
ベルをつけるのは義務ですが、歩道でベルを鳴らして歩行者を退かせるのはダメ。「2万円以下の罰金または科料」です。ベルは、本来は歩行者ではなくクルマに対するもの。実際はクルマのドライバーにはベルの音なんて聞こえないのですが、今ほどクルマが密閉されていなかった時代の法律が残っているんです。
そのほか、主な決まりとしては下記の通りです。
○車道が原則で歩道は例外、車道では左端を走行。信号や一時停止の順守(3か月以下の懲役または5万円以下の罰金)○歩道では車道寄りを通る。すぐ停止できる速度(徐行)で、歩行者の通行を妨げる場合は一時停止(2万円以下の罰金または科料)○傘さし運転や、携帯電話を使用しながらの運転の禁止(5万円以下の罰金)○飲酒運転の禁止(5年以下の懲役または100万円以下の罰金)○夜間はライト(前照灯は白か薄黄、赤の尾灯か反射板)を点灯(5万円以下の罰金)
特に、車道での逆走は絶対ダメ。たまに、「後ろからクルマが来るのが怖い」と右側を走る人がいますが、クルマはもちろんクルマの陰からバイクや自転車も来ます。あと、歩道から急に車道へ出たり、交差点を斜めに渡ったりするのも違反です。クルマと同じように車道を走っていれば、ドライバーは注意してくれるので事故は少ないのですが、歩道を通行しているとドライバーの意識からは外れてしまっていますから、意識の外から急に飛び出して来るように感じます。自転車事故の7割以上が実は交差点で起きています。
■保険とヘルメットは必須!会社への届け出も忘れずに
――特に、通勤で自転車を使う人への注意点があれば教えてください。
いくつかありますが、まずは、ヘルメットを着用すること。自転車事故で亡くなる方の65%は頭部損傷です。頭だけは絶対に守りましょう。
2つめは、保険に入ること。誰かをケガさせたり死なせてしまったりしたら、5,000万円もの賠償が必要になるケースもあります。毎日自転車に乗っていれば、それだけ事故の確率は高まるもの。年間4,000円くらいの自転車の保険もありますし、普通の保険に対人傷害の特約をプラスしてもいいですよ。
それから、会社の上司に届け出ておくこと。
こっそり自転車にして電車の定期代をもらっちゃうのはダメです。ぶっちゃけ、通勤途中の事故というのは、「通勤経路として認められるルート」であれば、自転車通勤であることを会社に申請していなくても労災はおりるのですが……やっぱり、マズイですよね。
社内規定で自転車NGなこともありますし、今の世の中、事故がなくても、無断で自転車通勤をしただけで解雇されてしまうこともありえます。
特に決まりがないなら、ちゃんとヘルメットを着用しますから認めてください……みたいな一筆を自分で書いて、上司に渡しておくと安心です。私のサイトでも書式の例があるので、活用してください。
また、自宅か勤務先の近所に、信頼できる店を探しておくといいですね。初めてスポーツ用自転車を購入する方は分からないことがたくさんあると思いますし、毎日乗るのですからメンテナンスも大事です。不具合を感じたまま乗るのは危険ですから、何かあったら、すぐにお店に相談しましょう。
■安全のためには、ハード面と意識、両方の改革が必要
――逆に自転車に乗る立場から、こうしてほしいという要望は?
急いでほしいのは、自転車専用レーンの確保です。車道左端に50cmあればできるんです。すごく狭いように感じますが、車道は歩道と比べて凹凸が少ないし歩行者もいない。走りやすいので、そんなに横幅はいらないんです。そして、各種の道路標識。日本の道路標識は言葉で示しているものが多いのですが、小さい子供や外国の方にも分かるように、絵柄や矢印などで示すのがいいでしょう。
また、自転車が車道に出るにはドライバーの理解も必要です。歩道を歩行者へ返すために、協力してほしいですね。
自転車は、エコだし健康的だし、楽しい乗り物です。せっかく自転車に乗る人が増えているのですから、自転車は邪魔だとか危ないとか思われてしまうのはとても残念。歩行者も自転車もクルマも、みんなが共存できる取り組みが進めばいいなぁと思います。
――ありがとうございました!
内海潤
自転車ツーキニスト。スカパー!局のAct On TV勤務時代に自転車の魅力に取りつかれて自転車通勤を始め、多くの方に広めたいと起業。自転車通勤者応援サイトの「TOKYOツーキニスト(http://tokyo-tookinist.com/)」を立ち上げる。現在、NPO法人 自転車活用推進研究会の理事として自転車の市民権確立を目指している。
(取材・文/島田彩子)
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