【コブスくんのモテ男道!】温泉ソムリエが教える。泉質で温泉を選ぶ方法
元オリンピック・ショートトラックスピードスケートの選手で、現在は温泉ソムリエやウォーキングキャスターとして活躍する勅使川原郁恵(てしがわら・いくえ)さんに、温泉選びのコツについてお尋ねしました。
■温泉法による泉質分類は9種類
まず、泉質の種類について、勅使川原さんは、次のように説明します。
「現在は、昭和54年に改正された『温泉法』で、9種の泉質に分類されています。旅館の温泉の壁などに、泉質が貼(は)ってあるでしょう。その『掲示用新泉質名』ごとに、大まかな効能を知っておくと温泉選びの役に立ちます」
ではその9種の泉質と、代表的な温泉地を紹介していただきましょう。
1.単純温泉
肌触りが柔らかく刺激が少ないのが特徴で、子どもや高齢者に優しい湯と言えます。
家族で出掛けるときにお勧めできる「家族の湯」と言われます。
温泉地:下呂(げろ。岐阜県)・道後(どうご。愛媛県)・由布院(ゆふいん。大分県)など
2.塩化物泉(旧・食塩泉)
切り傷ややけど、慢性皮膚病に効くため、「傷の湯」と呼ばれます。保湿クリーム効果もあるので、しっとりした美肌づくりに適しています。慢性便秘、肥満、高血圧、肩こり、腰痛などの筋肉痛などにも。
温泉地:熱海(あたみ。
静岡県)・有馬(ありま。兵庫県)・南紀白浜(和歌山県)など
3.炭酸水素塩泉
切り傷ややけど、慢性皮膚病、慢性消化器病。肌の角質を取るクレンジング効果、美肌の効能があるので、「美人の湯」と言われます。
温泉地:東鳴子(ひがしなるこ。宮城県)・龍神(奈良県)・別府(大分県)など
4.硫酸塩泉
切り傷ややけど、慢性皮膚病、肥満症に効く「傷の湯」。かつて、武将の傷を癒やしたと言われるエピソードが各地に伝わっています。肌の保湿効果、皮膚の血行促進効果も望めます。
温泉地:伊香保(いかほ。
群馬県)・稲取(いなとり。静岡県)・黒川温泉(熊本県)など
5.二酸化炭素泉
皮膚から炭酸ガスを吸収し、毛細血管を広げて血流を促します。心臓に負担をかけないため、「心臓の湯」と言われます。高血圧、のぼせやすい人にお勧めします。
温泉地:玉川(秋田県)・湯屋(岐阜県)・吉川温泉(よかわ。兵庫県)など
6.含鉄泉(がんてつせん)
主成分が鉄分で、熱伝導率が高く、体の芯まで温めます。つかれば冷え性、ホルモンバランス不調、月経障害、飲用で貧血に効果があると言われる「婦人の湯」。源泉では無色透明ですが、空気に触れると鉄分が参加して赤茶色に変化します。
温泉地:長良川(ながらがわ。岐阜県)・有馬(ありま。兵庫県)・雲仙(うんぜん。長崎県)など
7.硫黄泉(いおうせん)
独特の鼻をつくにおいがあり、血管を拡張するため、冷え性、高血圧、高血糖、動脈硬化などに効果がある「メタボの湯」。肌のシミ、くすみにも効く、美肌効果も。
温泉地:登別(のぼりべつ。北海道)・白骨(しらほね。長野県)・新穂高(しんほだか。
岐阜県)など
8.酸性泉
強い殺菌効果があり、湯の成分が肌にしみることも。入浴で水虫などの慢性皮膚病に効き、肌を活性化します。飲用では慢性消化器病などに効果が認められ、「仕上げの湯」と呼ばれます。
温泉地:蔵王(ざおう。山形県)・草津(群馬県)・万座(まんざ。群馬県)など
9.放射能泉
認められた適応症の数が多いため、「万病の湯」と呼ばれます。特に、痛風や胆石症に効く唯一の泉質であることも知られています。また、保温効果が高く、冷え性や、イライラや精神不安など自律神経のバランスを整える効能もあります。
温泉地:奈女沢(なめさわ。群馬県)・恵那ラジウム(岐阜県)・三朝温泉(みささ。鳥取県)など
■美肌か内面の美を追究するのか
例えば、美人になりたい場合はどこを選べばいいのでしょうか?
「美肌づくりを目的とするなら、2の塩化物泉、3の炭酸水素塩泉、4の硫酸塩泉です。イライラ解消やホルモンバランスを整えるなど内面の美人を目指すなら、6の含鉄泉、9の放射能泉がいいでしょう。肥満対策やダイエットが目的なら、7の硫黄泉を探します。
また、刺激が苦手なら1の単純泉、刺激好きなら8の酸性泉。のぼせ体質なら5の二酸化炭素泉と、自分の体質に合った泉質を探します。
悩みが多い肩こり・腰痛の対策には、1の単純温泉でゆったりつかる、また、2の炭酸泉、7の硫黄泉、9の放射能泉など血流促進効果がある泉質を選びましょう」(勅使川原さん)
最後に勅使川原さんは、
「温泉は太古の昔からわく、複数の成分が混じり合う自然のものです。
泉質を肌で感じて、自分の感覚を大事にしてください。
温泉の効能は、3日ほどで感じとれるはずです。肌で泉質を知るためには、少なくとも、2泊3日以上の温泉旅をおススメします」とアドバイスします。
これまで温泉旅行と言えば、旅館の雰囲気や料理、値段、観光スポットをメインに選んでいました。泉質選びの旅という目的が増えると、楽しみも倍増です。
監修:勅使川原郁恵氏。
ショートトラック・スピードスケートの種目で‘98年長野五輪、2002年ソルトレークシティー五輪、さらに’06年トリノ五輪と、3度のオリンピック出場・入賞を果たす。引退後、朝日新聞のプリンセスウォーカー、(社)日本ウオーキング協会のウォーキング親善大使などを経て、多くの企業のウォーキング・アドバイザーを務めながら、メディアや講演など多方面で活躍中。温泉ソムリエ、野菜ソムリエなどの資格を有し、「年代を問わない美と健康」を提唱している。 著書の『ウォーキングでナチュラル美人ダイエット』(扶桑社 1365円)は、ウォーキングでけんこう骨や骨盤、精神面などへ働きかける方法とその効果をわかりやすく解説した好評の一冊。
(藤井空/ユンブル)