【エンタメCOBS】開業にかかるお金
■個人事業にする?会社をつくる?
自分で事業を始める場合、「個人事業」か「会社を設立」か、どういう形態で行うかによって、必要な初期費用も変わってきます。
ちなみに「個人事業」とは個人が自己責任において事業を行うこと。いつでも自由に開業ができる上、利益は個人のものにできるという自由度の高さが魅力です。その反面、負債は個人が無限責任で負うといったデメリットがあります。また、法人に比べて税金面で場合によっては不利になるケースもあります。
一方「会社を設立」となると、責任は個人ではなく法人格(法律上の権利義務の主体)へと移行します。社会的信用度は増す上、個人事業では無限責任である債務は法人への有限責任になります。個人にまで支払い義務は及びません。デメリットとしては、設立に関して法的手続きが必要となること。また、事業内容は定款の記載事項に限られ、変更するには変更登記が必要となるなど、いろいろな規制があります。
■「個人事業0円」VS「会社設立の資本金1円」!?
個人事業にしろ、会社設立にしろ、事業を始めるにはどれぐらいのお金がかかるのか検証してみます。
個人事業の場合、開業するときに税務署へ「開業届」を出すだけで手続きは終わりです。この手続きに関してまったくお金はかかりません。
0円で開業することができます。
一方、法人格となる会社設立の場合は、2006年の会社法施行によって株式会社で1千万円以上必要だった資本金は1円以上となり、規制がかなり緩和されました。ただし会社設立が1円でできるということではありません。
法人格となる会社をつくる際には法的手続きが必要です。自分で手続きをすべて行う場合に必要なお金は以下の通りです。
<自分で手続きを行った場合に必要なお金>
手順必要な費用
1.会社の概要についての検討、決定0円
2.定款の作成(自分で作成)0円
3.発起人による設立総会の開催0円
4.定款の認証定款認証手数料52,000円
収入印紙代40,000円
5.出資金の払込、証明書作成0円~
6.登記書類の作成(自分で作成)0円
7.登記申請書類の提出(登録免許税150,000円
8.履歴事項全部証明書(登記簿謄本)、印鑑カード、印鑑証明書の取得3000円~
9.その他代表取締役印5,000円~
社印(角印)
銀行印
※費用はあくまでも目安とお考えください
個人で手続きをすべて行った場合、たとえ資本金が1円としてもそれ以外に25万円ぐらいの初期費用が必要となります。
■専門家に依頼しても実質フィーが0円になることも!
自分で定款や書類を作成する時間をかけられない、という人は司法書士や行政書士といった専門家に諸手続きを依頼することになります。ちなみに専門家に頼むと以下のことを代行してもらえます。
素人では1カ月~2カ月かかると言われる手続きも、数日から数週間で終わらせることができます。
手順(番号は前述の番号)
2.定款の作成
4.定款の認証
5.出資金の払込、証明書作成
6.登記書類の作成
7.登記申請書類の提出
8.履歴事項全部証明書(登記簿謄本)、印鑑カード、印鑑証明書の取得
専門家へのフィーは約4万円~10万円。しかし、専門家は通常電子定款認証を行っているので、専門家に依頼すれば定款認証時の印紙代4万円が不要(節約)になるというメリットがあります。
<専門家が手続きを行った場合に必要なお金>
登録免許税、印紙代、定款認証料等250,000円
専門家へのフィー40,000円~100,000円
電子定款認証▲40,000円
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合計250,000円~310,000円
自分でする場合と比較すると、
(25万円~31万円)-25万円=0円~6万円分費用が余計にかかるという計算になります。
ただ、うまく専門家を生かせば、自分で手続きするよりも効率的でリーズナブルにすることが可能です。自分にあった専門家を見つけるためには、市区町村や信頼できるサイトで告知している無料相談を利用するのがオススメです。
まとめると、事業を始めるにあたっての手続き費用は、目安ですが、会社づくりに必要な手続きを自分でしても、専門家に任せても25万円~。将来、開業してみたいと持っている人は、事業への責任、労力とコストを多面的に考え、自分にあった形態、手続き方法を見つけてみてはいかがでしょう。
取材協力:中野 裕哲(なかの ひろあき)
中野裕哲税理士・社会保険労務士・行政書士事務所代表
起業コンサルV-Spirits代表(http://www.v-spirits.com/)
ドリームゲート起業アドバイザー、All About『起業・独立のノウハウ』ガイド
(文/森眞奈美)
■執筆者 プロフィール
森眞奈美(もりまなみ)
サンダーバード国際経営大学院にて国際経営学修士号取得後、米国系再保険会社に入社。退社後ライター業をしながら、AFPを取得。現在は「保険」、「クレジットカード・電子マネー」、「ライフプランニング」などマネーに関するコラムを雑誌やWebで執筆中。