【エンタメCOBS】日食を見てみよう ~2012年5月21日の金環日食~
今年(2012年)の5月21日(月)の朝には日本国内の広い範囲でも日食が観測できますので、ちょうどよい機会として、今回は日食が起こる仕組みやその種類について見ていきたいと思います。
■日食が起こる仕組みとその種類
日食とは、地球と太陽との間に月が入ることにより、地球から見たときに太陽が手前の月に隠されて見えなくなる現象のことを言います。
一言で日食と言っても、実際には太陽の全体が隠れる「皆既日食」、太陽が細いリング状に見える「金環日食」、太陽の一部だけが隠れる「部分日食」などいろいろな種類があります。
でも、このように太陽の隠れ方にいろいろな種類があるのはなぜでしょう?
その理由は、地球や月の公転軌道の傾きと形状に秘密があります。
まず、1つ目の傾きについては、地球と月の公転軌道の傾きの違いがその原因です。
簡単に言えば、地球の公転軌道と月の公転軌道は、同一平面上にあるわけではないのです。
仮に、この2つの軌道が同一平面上にあれば、地球から見たときの太陽の通り道(黄道)と月の通り道(白道)とが一致するため、月が太陽と地球の間に入るタイミングとなる「新月」のときには必ず日食が起こるはずです。
しかし、実際には地球の公転軌道と月の公転軌道は同一平面上には無く、約5度傾いています。そのため、太陽と月・地球が一直線上に並ぶチャンスが少なくなり、日食が起こる回数が減るわけです。
次に2つ目の理由である形状ですが、こちらは地球や月の公転軌道は完全な円ではなく、やや楕円(だえん)形をしていることから、太陽~月~地球間の距離は常に変化しているという点にあります。
このため、太陽と月・地球が一直線上に並んだ状態で、さらに地球から見たときに太陽より月が大きく見えるときには、太陽がすべて隠れて見えるため「皆既日食」となり、逆に太陽より月が小さく見えるときには、月が太陽のすべてを覆い隠せないため「金環日食」として見えるというわけです。
なお、地球に当たる月の影は小さく、皆既日食や金環日食として見える地域は非常に限られています。そのため、それらの地域から少し離れた場所では、太陽の一部だけが隠れた状態になり、「部分日食」となります。■2012年5月21日の日食
今年(2012年)の5月21日には、天気が良ければ世界各地で日食を見ることができます。
日本国内では、関東地方から九州地方にかけての広い範囲で金環日食を、それ以外の地域でも部分日食を観測することができます。
実際の見え方としては、地域によって多少のバラつきはあるものの、おおよそ朝6時過ぎには太陽が少しずつ欠け始め、7時半前後にはピークを迎えます。その後、9時前後にかけて、ゆっくりと元に戻っていき、日食は終了となります。
この間、金環日食が見られる地域では、数分程度、リング状の太陽を見ることができます。
ちなみに金環日食に限れば、次に日本国内で見られるのは2030年の北海道となります。それまではこの先18年間も見ることができません。
このようにとても貴重な機会ですので、朝の早い時間ではありますが、もし天気が良ければ普段より少し早起きしてみてはいかがでしょう。
■観測時の注意点
日光は有害な紫外線や強い熱を出しているため、太陽を肉眼で直接見ると、目の網膜が損傷を受け、ひどい場合には失明する可能性もあります。
日食を観測する際には、黒い下敷きやサングラスなどでは紫外線を防ぐことはできないため、専用の日食グラスなどを使うようにしてください。
■まとめ
今回は、2012年5月21日の金環日食に向けて、日食が起こる仕組みとその種類について、太陽・月・地球の位置関係から見てきました。
月や地球の軌道(傾き・形状)の影響、それらお互いの位置関係によって、見え方が変わるという点について理解しておくと、実際の日食を見たときの感動も一味違うと思います。
正しい観測方法で、ぜひこの2012年最大の天文ショーを楽しんでみてはいかがでしょうか。
(文/寺澤光芳)
■著者プロフィール
寺澤光芳
小さいころから自然科学に関心があり、それが高じて科学館の展示の解説員を務めた経験も持つ。現在は、天文に関するアプリケーションの作成や、科学系を中心としたコラムを執筆している。