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【エンタメCOBS】新幹線でインターネット

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【エンタメCOBS】新幹線でインターネット
今年(2012年)の3月に初代のぞみである300系が引退した新幹線。

現在は最新のN700系車両が多く見られるようになってきましたが、このN700系の特徴として、東京~新大阪間での公衆無線LANによるインターネット接続が利用できるようになっています。

それにしても、300km近くの高速で移動する新幹線の車両の中で、なぜ無線LANによるインターネット接続が安定して利用できるのでしょうか。

そこで、今回はその仕組みに迫っていきたいと思います。

■N700系車内での通信の仕組み

まず、N700系の各車両にはそれぞれ2カ所ずつの無線LANアクセスポイントが設置されており、車内の利用者はこれを経由してインターネット通信を行うことができるようになっています。

そして、車内のアクセスポイントを経由したデータは、LAN経由で車内移動局に集約されたのち、地上の設備とやり取りをします。

ここで、東海道新幹線の車内と外部との通信方法について紹介しましょう。

もともと、1964年の開業当初は、山などに設置した基地局と車両内の移動局との間で通信を行う「空間波方式」を利用して、指令室と乗務員との交信など業務系通信を行っていました。


その後、1989年からはLCX方式と呼ばれる列車無線設備を利用しており、さらに設備の老朽化に伴い、2009年にはそれまでのアナログ方式からデジタル方式への切り替えを行っています。

これにより、データが効率よく流せるようになり、帯域に余裕ができた結果、業務系通信の他に旅客向けへも開放することで、車内でのインターネット接続が可能となったわけです。

ちなみに、車内にある公衆電話での通話や、電光文字ニュースなどについても同じLCX方式を利用しています。

■LCXの仕組み

ところで、LCX方式とは一体どのようなものでしょうか。

一言で説明しますと、LCXとはLeaky CoaXial cableの略語で、「漏洩同軸ケーブル」のことを指しています。
同軸ケーブルと言われてもあまりなじみがないかも知れませんが、テレビのアンテナケーブルなどにも使われている、ごく一般的な種類のものです。

LCXは、さらにこの同軸ケーブルに特定の間隔で細長い穴を空けたものです。ケーブルに穴があることで、そこから漏れ出る電波により、LCXのごく近い範囲に限って、データの送受信が可能となる仕組みです。


そして、このケーブルを線路に沿って敷いておくことによって、それまでの空間波方式では通信ができなかったトンネル内などでも、通信ができるようになりました。

ちなみに最近は、東京など地下鉄のトンネル内でもケータイが圏外にならない路線がありますが、そういった場所でもこのLCXが使われています。

■新幹線内での通信速度は?

気になる無線LANでの車内インターネット接続サービスの通信速度についてですが、上り(列車→LCX)が1Mbps、下り(LCX→列車)が2Mbpsとなっており、この帯域を16両編成のすべての乗客で分け合うことになります。

ただし、最近のスマートフォンなどの急速な普及により、遅い・つながりにくいといった状況が発生していることから、その対策として2012年5月31日以降は、動画サービスやファイルダウンロードなど一部の利用方法に限って、速度制限がかけられるようになります。

もともとLCXは無線LAN専用で敷設されたものではなく、乗務員の通信用で空いた帯域を利用しているため、やむを得ないのかも知れないですね。

■まとめ

多くの人が利用されたことがある新幹線だと思いますが、そこで使われている通信の仕組みとなると、ご存知の方も少ないでしょう。

今回は、新幹線内外での乗務員のやり取りや、無線LANでの車内インターネット接続サービスで使われている通信方式について見てきましたが、いかがでしたでしょうか。

将来的には、より高速・大容量通信が可能な方式が採用されることによって、一層快適に利用できるようになるかも知れませんね。


(文/寺澤光芳)

■著者プロフィール
寺澤光芳
小さい頃から自然科学に関心があり、それが高じて科学館の展示の解説員を務めた経験も持つ。現在は、天文に関するアプリケーションの作成や、科学系を中心としたコラムを執筆している。

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