【エンタメCOBS】知っておきたい世界の話 盆栽
今回取材で伺った『清香園』は埼玉県の盆栽町にあります。この盆栽町というのは非常に由緒正しい所で、盆栽業者や盆栽愛好家が集まって作られた村なのです。そもそも、東京の小石川周辺に多くあった盆栽業者が、1923年の東京大震災で被害に遭い、集団で移住したのがその始まりとされています。清香園はなんと170年以上の歴史を持つ盆栽業の老舗(創業嘉永年間)で、山田寅幸さんはその五代目であります。
――盆栽というと、お年寄りの趣味みたいなイメージがありますが、でも実は非常に日本的な美意識に満ちた園芸だと思うのですが……。
山田取締役そうですね。最近では海外で本当に人気があって若い人も注目しています。ぜひ日本でも若い方に興味を持ってほしいですね。
――盆栽を楽しんでいる人は増えているんでしょうか。
山田取締役どこまでを盆栽のファンととらえるかだと思うんですよ。昔ながらの、何十万円もする盆栽を購入するファンの方というのは、抱えるような大きな盆栽など、住宅事情もあって減っていると思います。ただ、インテリアとしての盆栽、例えば苔玉(こけだま)なども盆栽ととらえるのであれば、ファンは増えていると言えます。
*……苔玉(こけだま)というのは、木の根の周りを球状に丸めた土で覆い、その土の上に苔を固着させたもの。
見た目は、苔で覆われた球状の土から木が生えているように見える。この苔玉は盆栽の「根洗い」をルーツとする技法で作られるものでインテリアとしての人気も高い。
――なるほど、確かに苔玉などの方が若いコたちにアピールするかもしれませんね。最近の人気の盆栽ってどんな物でしょうか?
山田取締役今は桜が人気があります。日本人で桜が嫌いな人っていないと思いますが。うちでも年間800鉢ぐらいは出ますね。
■盆栽に関する教養盆栽は平安時代から!
――そもそも盆栽というのはいつぐらいからあるのでしょうか?
山田取締役平安時代からあると言われています。そのルーツに関しては、元は中国から来たものであるという説、いや日本独自の物であるという説、諸説あるんですが。
――平安時代からあるんですか!
山田取締役だそうです(笑)。でも盆栽が花開いたのは、庶民に余裕が出た江戸時代になって園芸ブームが起こってからですね。
――その江戸時代の盆栽と今の盆栽はずいぶん違うものなんでしょうか?
山田取締役技術が違いますからね。
――技術が?
山田取締役今の盆栽は針金を使って枝ぶりを作っていきますが、当時はせいぜいひもで引っぱったりぐらいで。なので動きの部分、繊細さとかがなかなか……。それが出せるようになったのは戦後からじゃないでしょうか。
■「盆栽の見方」と「いい盆栽」とは?
――教養として盆栽の見方を教えていただけないでしょうか。
山田取締役盆栽には正面があるんです。
こちらから見なさいという。
――そうなんですか。
山田取締役枝の剪定なども、こちらから見る、という正面を基準に決めて行いますしね。あとですね、仰ぎ見るといいますか、下から見るという見方をしますね。
――いい盆栽というのはどういう盆栽なのでしょうか。
山田取締役重視するのは「古さ」と言いますか。「古木感」、「大木感」がいかに出ているかでしょうか。先ほどの下から見るというのも、大木感を感じことに通じるわけです。
――なるほど。
山田取締役時間がたちますとね、木の肌にも「しわ」が出てくるんですよ。これが「古木感」につながります。ほかに、根っこの張り具合、これを「粘り」と言いますが、この粘りがいかに出ているかは大事です。ほかにも「苔むした感じ」なども重要でしょうか。
■盆栽とは「時間芸術」である!
――伺っていますと、時間経過を表現することが重要という風に聞こえるんですか?
山田取締役そうです。総じて「古いものはいい物である」ということですね。盆栽は「時間芸術」なんですよ。
■盆栽をゼロから始めるには!?
――盆栽をゼロから始めるのにはどのくらいのお金がかかりますか?
山田取締役まず基本となる道具セットですね。
■道具5点セット
太枝用のハサミ
細枝用のハサミ
ピンセット
やっとこ
針金切り
合計:16,275円(鉄製の場合)
――ピンセットは何に使うんですか?
山田取締役これが重宝するんですよ。小さな芽をつまんだり、こけを扱ったり。
――やっとこは?
山田取締役枝を形づくるのに針金を使いますから、それをねじったりするのに必要ですね。
――なるほど。それで針金切りも要るんですね。
山田取締役ステンレス製の道具セットもありますが、こちらは24,500円です。
――ほかに必要な物はありますか?
山田取締役盆栽の手入れをするのに肥料と(木に使う)消毒薬が要ります。
――いくらぐらいでしょうか?
山田取締役肥料が420円から、消毒薬が1,000円ぐらいですね。
――安いですね。
山田取締役最初はそれぐらいで始めるのがいいでしょう。あとは盆栽本体です(笑)。
――鉢を買って、そこに植える苗木を買って、それで始めればいいんですか?
山田取締役もちろんそれでもいいですが、もう形になっている盆栽を買ってそれで始めてもいいんですよ。例えば、最近人気の桜は4,000円ぐらいからありますので。これからの季節なら紅葉もいいと思います。寄せ植えの紅葉ですと4,000円~5,000円ぐらいからですね。
――思ったより高くないんですね。
山田取締役そうですか(笑)。そうだ、木製の縁台があった方がいいですよ。盆栽はその上に置いて管理した方がいいので。縁台は3,000円~5,000円です。
■初めての人向け「盆栽始めますセット」
●5点道具セット(鉄製):16,275円
●肥料:420円
●消毒薬:1,000円
●木製の縁台:5,000円
●桜の盆栽:4,000円
合計:26,695円
*……『清香園』のサイトで通販があります。
――3万円未満で始められて一生楽しめるというのは、これはお得な趣味ですね(笑)。
山田取締役初心者の方は2年未満で枯らすことが多いですので、一生楽しめるように十分手入れをしてあげてくださいね(笑)。
――それは困ります(笑)。手入れの方法などはどうすれば?
山田取締役やはり我流でつき進むのではなく、周りの経験者や詳しい方に聞いた方がいいですよ。私の所では教室を開設して、みなさんに盆栽に関してお伝えしています。もし良かったいらしてください。
清香園さんでは彩花盆栽教室という盆栽を楽しむ学校を運営しています。また、初心者向けに「1日体験講座」も設けています(詳細は清香園のサイトを参照のこと)。盆栽に興味を持った人はぜひ門をたたいてみてはいかがでしょう?取材に行って思ったんですが「盆栽」って楽しそうですよ。
(高橋モータース@dcp)
清香園さんのサイト
http://www.seikouen.cc/