【雑学キング!】クジラ、雲、体感……地震の前触れとして信じていい現象とは?
質問は全部で8つ。地震の前兆としてメジャーな現象を挙げ、それぞれの信頼度を解説とともに、石渡先生に○△×で解答していただきました。
1:地震雲信頼度:×
そもそも、どのような雲が地震雲であるかという、定義・基準がはっきりとしない。地震が起きる時間・場所と、地震雲が出現するタイミング・範囲との関連性もあいまいです。
2:動物の異常行動(ナマズが騒ぐ、クジラやイルカの集団座礁など)判定:△
1995年の阪神大震災など、いくつかの地震が起きる直前に、動物の異常行動を観察したとの報告がありました。中国ではこのような観察をもとに、1975年の海城地震予知に成功したとされています。しかし、その後に起きた1976年の唐山地震、2008年の四川大地震などでは予知に失敗しています。
3:前震(ぜんしん:本震前に起こる揺れ)判定:△
東日本大震災の2日前に起きた揺れなど、いくつかの事例はあります。しかし、本震後に前震だったと判断する場合がほとんどです。群発地震が大地震の前兆であるケースもありますが、そのまま収束してしまうことも多い。いきなり本震が起きることも多いし、「これは前震だ!」と断定できる特徴がありません。
4:鳴動(めいどう:大きな音が聞こえること。
いわゆる"地鳴り")判定:△
1872年の浜田地震や、1854年の伊賀地震などで報告されていますが、すべての地震でこの前兆があるわけではありません。地震ではなく、地すべりや山崩れの前兆であることもあります。
5:地盤の隆起・沈降判定:△
1964年の新潟地震など、いくつかの大地震の前に観測されており、東海地震の予知研究はこの前兆をとらえることを目的として進められました。しかし、現在のところは成功していません。東日本大震災前も、この前兆は観測されませんでした。
6:井戸水や温泉の異常(水量の変化や濁り、ラドンという物質の変化量など)判定:△
1995年の阪神大震災など、いくつかの大地震の前に観測されています。ただし日本では、これらの観測によって予知に成功した事例はありません。
7:電波異常判定:△
ギリシャでは、地電流の変化を観測して、予知に成功したグループがあります。
しかし、日本を含めてギリシャ以外の国では成功していません。電波の伝わり方の変化で予知できるとする研究者もいますが、まだあまり成功していないようです。1995年の阪神大震災が起きる前に、テレビ、ラジオ、携帯電話などに雑音・不具合などの異常があったという報告は多数ありますが、2011年の東日本大震災ではあまり聞きませんね。
8:発光現象判定:△
1751年の越後高田地震、1930年の北伊豆地震などで報告されていますが、昼間の地震の場合は周囲が明るいので見えません。
―なんと、○がひとつもないという結果に。地震の前触れとして信じられる現象は、存在しないのでしょうか。
「信頼できる地震の前兆というのは、いまのところ存在しません。いずれも信頼できないものばかりです。
しかし、地震の前兆らしい現象に遭遇した際には、日時、場所、方角、継続時間など、詳しい様子・状況を可能であれば写真・動画などに記録し、大学や研究機関に報告してください」(石渡先生)
大地震が起こる前に、何かしらの異常現象があることは否定できないようです。しかし、それが直接地震と結びつくかどうかとなると……。地震予知に使えるかどうかという点でも「?」というのが、今回のテーマを通してわかったことでした。
石渡明(いしわたり あきら)
1953年生まれ。理学博士。横浜国立大学卒業後、金沢大学大学院および東京大学大学院で学ぶ。都立高校教諭を経て、パリ第六大学で助手を務める。帰国後は金沢大学理学部に勤務し、講師、助教授を経て2003年より教授に就任。
2008年からは東北大学東北アジア研究センターの教授を務める。専門は岩石学・地質学で、2009年に日本地質学会賞を受賞している。
http://www.cneas.tohoku.ac.jp/labs/geo/ishiwata/profilej.htm
(OFFICE-SANGA 杉山忠義)