【雑学キング!】フランス人に学ぶ・質素な暮らしを優雅に楽しむアイデア
■どこまでも「自分らしさ」を追求するフランス人
──フランスといえば、シャネルやエルメスといった高級ブランドがまず思い浮かび、質素とは無縁な気がするのですが……。
「いえいえ!フランス人の友人に、ブランド品を集めているような人は一人もいなかったわよ。フランスでは、『ブランド品の価値は認めるが、自分に似合うかは別問題』と考える人がほとんど。フランス人は個性を大切にしますから、自分らしさを演出できるかどうかに価値をおくんです」(吉村先生)
──例えばどのようなことでしょうか?
「ガーデンパーティーに招かれたときのこと。
ある友人がとてもすてきなサマードレスを着ていたの。でも、それはなんと元テーブルクロスだったんです!しかも、彼女には裁縫の心得もミシンもない。『プロヴァンス模様のサマードレスが欲しかったから』という理由だけで、自己流でチクチク縫ったそう。
彼らは自分にぴったりなデザインだと思ったら、カーテンでもシーツでも洋服やバッグなどに仕立て直してしまうのが当たり前なのよ」
まさに「自分流・オートクチュール」ですね!
■コストをかけずにムダなく楽しく!
──ほかにフランス人は、日々の中でどのような工夫をしていますか?
「フランス人は、何でも自分でやるのが大好き。壁でもテーブルでも、自分で好きな色に塗り替えてしまうし、好みの柄の生地でカーテンを縫うのも、色あせたTシャツを好みの色に染め直すのも、お手のもの。これは彼らが器用だからなのではなく、業者に頼んで高い工賃を払ったりするくらいなら、趣味と実益を兼ねて自分でやった方が安価で楽しいという考えね。
友人のM氏などは、週末用の別荘を自分で建ててしまったほどよ」
──お金をかけずに暮らしを楽しむ方法を、フランス人は熟知しているのですね。
「その通り。
日ごろの料理もそうです。フランス料理というとごちそうのイメージがあると思いますが、家庭料理はとても質素。前菜はレタスだけのサラダ、メインは週末に作り置きしておいたバラ肉の煮込み、あとはバゲット(フランスパン)と、ヨーグルトにハチミツをかけただけのデザート……といった具合。
残った野菜は捨てずに、ゆでてつぶしてポタージュに。肉を焼いたら、フライパンに残った肉汁は飲み残しのワインを注いでステーキソースに。
ラップだって、何度も使います。ラップの再利用は当たり前なのよ」
ケチというより、ムダがないのですね!
■「買えないから買わない」のではなく「なくても困らないから買わない」
──実は私、「高いし自分でも作れず、手に入れられない物」がたくさんあって、よく劣等感にさいなまれることがあります。フランス人は切り詰めた生活の中で、そういう感覚を持つことはないのでしょうか?
「そうね。
確かに今の日本には、購買意欲がそそられる物や情報があふれているから、欲しいものが手に入らないことがストレスになるのもうなずけるわ。
だから、『ステキだけど手に入らない物』は『観賞用』と思ってはどうかしら。
そもそも『買えないから買わない』物より、『なくても困らないから買わない』物の方が多いでしょう。フランス人にとって『買い物』とは、暮らしに必要な物を補充すること。そういう考え方を持てば、卑屈にならずにすむんじゃないかしら」
──なるほど、発想の転換ですね。
「フランス人は、質素を『苦』と思っていません。切り詰めてお金をためた先には、家族とのバカンスや、自宅のリフォームといった楽しみが待っているから。
家族や恋人、そして日々の暮らしに『愛』を持つことこそ、本当の豊かさだと思うわ。
フランス人が優雅に見えるのは、その本質をいつも忘れないからだと思います」
吉村先生の話をうかがっていると、フランス人の暮らしの工夫は、一昔前の日本人が当たり前に行っていたそれと同じなのではないかという気がしました。
あるもので楽しむ。それだけのことを、われわれは忘れかけているのかもしれません。
吉村先生のお話を参考に、あなたもぜひ「優雅に」暮らしてみませんか?
吉村葉子。エッセイスト。20年間のパリ生活から得た見聞をもとに、日仏の文化の違いを通し、より良い生き方を提案するエッセイなどを執筆。著書に「少しのお金で優雅に生きる方法」「お金がなくても平気なフランス人お金があっても不安な日本人」など多数。現在、神楽坂で焼き菓子やお茶・ワインなどを提供する「ジョルジュ・サンド」を経営している。
(OFFICE-SANGA 百田カンナ)
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