【エンタメCOBS】漫画を描くツールのお話
■始まりはアニメ制作ソフト!
――そもそも、漫画制作用のソフトを作ろうと思い立ったのはなぜだったんでしょうか。
成島さんそのためには、まず弊社の成り立ちを説明しないといけないですね(笑)。弊社はもともと、CGプログラマーだった2人が設立した会社です。CGと言っても、今みたいにソフトがあって、すぐレンダリングできてというようなものではない時代です。光の計算や形状をプログラムで書いて、という20年以上前の話です。自分たちがCGを制作するクリエイターだったので、何かクリエイターの役に立つソフトを世に出す仕事をしたい、と考えたんです。
――CGソフトはその当時色んな会社が先行していませんでしたか?
成島さんそうです。いろいろなソフトをさまざまな会社が制作していました。ですので、今からその厳しい競争に飛び込んでも仕方がないだろうと思いました。
そこで、アニメ制作に目をつけたんです。アニメ制作は本当に手作業の世界で、発注元から下請けさんまで、色んな人が、さまざまなパートを手作業で担当しています。これをデジタル化できないかと思ったんです。
――アニメ制作は、職人というか家内制手工業の世界みたいなところがあるようですね。
成島さんはい、アニメ制作用の『RETAS!』(レタスと読む:現在は『RETAS STUDIO』)というソフトを開発しました。もともと弊社のセルシスという名前も、「セル」アニメを「シス」テムで作るというところから付けたんです。
――そうなんですか。レタスは現在ではずいぶん普及していますね。
成島さん最初のバージョンから約20年たちましたが、改良を続けて、今ではアニメ制作現場のほぼすべての場所で使用されていると思いますよ。――レタスの成功を見て、漫画制作ソフト『ComicStudio』の開発を始めたのですか?
成島さんレタスはうまく現場の方々に導入していただけたのですが、アニメ制作ソフトというのは、アニメの制作現場が増えないと売り上げが伸びないですよね。ですが、アニメ制作者が右肩上がりで増えるということはないわけです(笑)。ですから、レタスのビジネスとしては、ソフトをアニメ制作スタジオさまに購入していただいて、後はメンテナンスをしていくということで一応の完成なんです。そこで、次のテーマを考えていたところ、ちょうどそのころから、日本のアニメや漫画が海外からも高い評価をうけるようになり、「漫画制作のソフトを作ってみようか」と。それで『ComicStudio』を2001年に出しました。
■日本独自のソフト『ComicStudio』
――2001年と言いますと、漫画家さんでも先行している人の中では既存のソフトを使ってデジタル作業をしていた人もいたと思うんですが。例えば、アドビの『PhotoShop』などの存在をどう見ていましたか?
成島さん他社さんのソフトをライバルだと思ったことはほとんどないんですよ。
と言うのは、PhotoShopにしても本来はフォトレタッチソフトで、漫画を制作するのにも使えるというソフトですよね。弊社は漫画制作専門という形ですから。また、PhotoShopからComicStudio、ComicStudioからPhotoShopと、連携がとれるようになっていますので、むしろ相互補完的な関係という感じだと思います。それにアドビさんのような世界的な企業からしたら、漫画制作専用ソフトというは、市場のごく一部の日本の、そのまた一部といった感じではないでしょうか(笑)。
――バージョン1.0の評判はいかがでしたか?
成島さん最初はあまり良くなかったです。バージョン1.5になって、それまで別売していた素材などをワンパッケージにしてから評判も上がりまして、売れ行きも上向きました。
――素材というのは、例えばスクリーントーンなどのことでしょうか。
成島さんそうですね。
アプリケーション、素材などをワンパッケージ化して、バージョンアップを繰り返し、改良を繰り返して……今に至っています。
――少しずつ評価も上昇していったという感じですか?
成島さんそうですね、なにしろ漫画制作ソフトという前例がないところに投入した製品ですので。開発者の思い込みと熱意だけで市場投入しました。そこからお客さまの声を聞いてブラッシュアップして、の繰り返しです。
――現在のComicStudioの最新版は何世代目に当たるんでしょうか?
成島さんComicStudioとしてはバージョン4.0が最新ですね。ですが、現在このComicStudioの機能を引き継いで、『ILLUST STUDIO』(イラストスタジオ)という別の製品の後継にも当たる『CLIP STUDIO PAINT』(クリップスタジオ ペイント)という製品を発売しています。いわば世代交代を行っています。
――世代交代を進めている理由は何ですか?
成島さんいろいろ理由はありますが、1つは、最新のPCやOSの性能を十分に生かしたいこと。
また、10年以上前から継ぎ足し、継ぎ足しで機能追加を進めているので、複雑になったプログラムを整理し、効率的に開発を進めたいということですね。
――特殊なジャンルだけにお客さんにアピールするのも難しいと思うのですが。
成島さんカラーイラストを描く機能、単ページのマンガを描く機能とさらに追加機能も入れて、CLIP STUDIO PAINT PROはパッケージ版で8,925円[税込み・希望小売価格]、ダウンロード版で5,000円です[税込み]。とても安価に設定しました。これはお客さんに増えてほしいからです。1/10の価格にしても10倍売れればいいじゃないか、という考え方です。
■ボーン・デジタルなコンテンツを次のステージへ
――これからのバージョンに盛り込みたい機能などはありますか?
成島さん「ボーン・デジタル」という言葉があります。そもそもデジタルで見ることを前提として制作されたデジタルコンテンツという意味です。
今までのComicStudioは、最後はアナログの紙の漫画になることを目指したソフトでした。でも、そうではなくてデジタルで制作され、デジタルコンテンツとしてあり、流通するものを作れるソフトにまでしたいですね。
――具体的にはどういうことでしょうか?
成島さん例えばスマホで読める「電子書籍」というのがありますが、これは漫画にしろ小説にしろ、もともとアナログの紙のものを、スマホ上の電子書籍上という形式の「本」にしたものです。ですから、スマホならではの「音」であったり、「インタラクティブ」な仕掛けであったりといったものは基本的に考慮されていません。元が本なので。でも、そういったデジタルコンテンツならではの機能も使ったコンテンツを作りだせるようなソフト、そのための機能を持ったソフトにしていきたいと思います。
――ネットの普及、スマホの機能などを考えるとすぐにできそうですが。
成島さん一番いいのは、ソフト自体は無料でみなさんに開放する。そして、できた作品が販売される時に少し対価を頂く、そんなビジネスにしたいんです。ただ、一足飛びにそこまでは行けません。徐々に一歩一歩です。
漫画制作ソフトという独自の道を進んできたComicStudio、その後継製品となるCLIP STUDIO PAINTは注目に値する存在です。これからどのように進化するのか、またもくろみ通りにユーザーが拡大するのか非常に楽しみです。
(高橋モータース@dcp)
セルシスのサイト
http://www.celsys.co.jp/
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