【エンタメCOBS】大まじめに作っていた世界のヘンな武器
■実に危ない携帯用核兵器『デイビー・クロケット』
旧ソ連と冷戦を戦っていたアメリカが開発したむちゃな兵器です。担いで運べる超小型の核弾頭の発射装置です。1961年に(当時)世界最小の超小型核弾頭『W54』が完成したことから一躍脚光を浴びます(ちなみに重量は23kg)。同年に『M-388デイビー・クロケット』の正式名称で当時米ソ対決の最前線、西ドイツの米軍に配備されました。
デイビー・クロケットの仕組みは、無反動砲に先ほどの核弾頭W54を装てんして発射するという簡単なのもの。1人で肩に担いで打てるようにと設計された、口径がやや小さい(4インチ=約102mm)無反動砲もあったのですが、重量などの関係で現実的にはそれは不可能でした。三脚に固定して打つか、車両に固定して打つかしかなかったのです。
有効射程距離は4インチ口径の『M-28』で約2km、6インチ口径(約152mm)の『M-29』で約4km。2kmというとすぐそこです。打った本人も核爆発に巻き込まれそうなこんな兵器を、開発して配備までしていたアメリカの神経が疑われますね。ちなみに冷戦が終わったのでデイビー・クロケットも無事撤去されました。
■それ行け『パンジャンドラム』! イギリスの企画倒れ
軍事マニアなら誰でも知っている、イギリス産の企画倒れ兵器と言えばこれです。
「糸巻き車」を想像してください。あれのバカでかいヤツです。ただし動力はロケット推進で、爆雷を抱いています。そんな物、何に使うんだと思われるでしょうが、そこがアイデアなのです。
敵軍が防備を固めている砂浜に上陸するのは簡単なことではありません。そこで(上陸用)舟艇(しゅうてい)にこのパンジャンドラムを積んで、敵が守っている浜に迫ります。船からパンジャンドラムから発進!ロケットに点火して100kmまで加速、敵陣に一気に突っ込んで爆雷が爆発……という企画でした。
これがうまくいきませんでした(笑)。
直径3mのホイールが2つあるボビン状のカタチをしているのですが、これが砂浜で空回り、砂浜のくぼみで横転するなどの大惨事。実用化に向けて頑張りましたが、あきらめて放棄されました。今では企画倒れの代表格となっています。
■アイデアは秀逸ですが……『風力砲』
第二次世界大戦中、日本と同様、制空権を失ったドイツも連合軍の飛行機を撃退するのに四苦八苦していました。そこで、考えられた珍兵器のひとつが『風力砲』です。酸素と水素の混合気体に爆発による高圧をかけて、圧搾空気と水蒸気の塊を打ち出し、敵の飛行機にぶつけます。
なんだかドラえもんの『空気砲』みたいですが、利用するのが空気と水なのでとにかくエコな兵器です(笑)。一説によると実際に連合軍の飛行機に使ってはみたけれども効果がなかったそうです。
残念ですね。
■えっ? 陸軍に潜水艦?
第二次世界大戦中に日本陸軍が潜水艦を持っていたのをご存じでしょうか?大激戦になったガダルカナル島で、駐留軍にうまく補給物資を(海軍が)届けられなかったので、業を煮やした陸軍が独自の潜水艦を持つことにしたのです。「何のノウハウもないのに大丈夫なのか?」と誰もが思うでしょう。やっぱり大丈夫ではありませんでした(笑)。
この陸軍製の潜水艦、正式名称は『三式潜航輸送艇』と言いますが、設計、建造とも海軍には隠して行いました(笑)。ゼロから作ろうという無謀な挑戦でおよそ戦時にする態度ではありません。そのため、艦首と艦尾の、どちらかが沈むと、どちらかが浮くという、沈まない潜水艦になる始末。
なんとか頑張って潜水できるところまでもっていきましたが、成功したと思ったら沈没しただけでした。
潜水艦ならぬ「沈没艦」です(笑)。「やった成功だ!」と思った陸軍のエラいさんがその沈没を見て万歳三唱したという話があります。コントみたいですね。とにかく、陸軍が潜水艦を持っていたのは古今東西でわが国ぐらいです(笑)。
まだまだ紹介したい珍兵器は多いのですが、あまりに長くなりますのでいったんここで置きます。兵器の開発史をよくよく眺めてみると、アイデアと実現できるかは別問題ということがよくわかります。
(高橋モータース@dcp)