【コブスくんの使えそうな仕事術】大人になってから絵心を身につけることは可能か?
■イメージをしっかり持つこと
中学校で美術教師をしているOさん。絵がなかなかうまく描けない生徒のために、授業で工夫していることがあるそうです。
「絵が上手で、何も言わなくてもスラスラと描いていく生徒や、絵を描くことを楽しめる生徒、うまくてもそうでなくても、取りあえず描いておけ、という生徒まで(笑)、クラスのなかにはいろいろな生徒がいます。
中でも一番つらそうなのは、『何を描いたらいいのかわからない』という生徒。
頭の中に完成した絵のイメージがまったくないので、目の前にモチーフがあっても、どこから手をつけていいのか、どんな風に描いたらいいのかわからないんですよね。
そこで、授業では絵を描きはじめる前に、手本となるものを2、3種類準備するようにしています。ここまで描ける人はこれを目標に、無理な人はこちらを目標にというように、いろいろなものを用意してあげることで、それぞれが到達地点を見つけられるのです。
最終的なイメージを示してあげることで、絵が苦手な生徒でもあまり迷わずに描くことができていると思います」
描くものは決まっていても、最後にどんな絵になっているかのイメージがないと描きにくいですよね。ほかの人が描いたもので、とてもわかりやすいと思ったものがあれば、それをイメージしたり、まねをして描きはじめると良いかもしれません。
■複雑なものでも、実は単純なカタチの寄せ集め
美術館で学芸員をしているMさんは、ものを描くときに重要な「見方」について教えてくれました。
「絵を描くのが苦手という人でも、図形が描けないという人はいないと思うんです。目の前にあるものがすごく複雑な形をしているように見えても、それは丸や三角、四角という図形の寄せ集めだったりするんですよね。
良い例が『棒人間』だと思います。人は顔や体、手、足があり、すごく複雑に見えますが、丸に線だけで描いた棒人間でも、人を描いているってわかりますよね。また、『木』などの漢字は、ものをすごく単純化した絵です。
こんな風に、記号化されているものを見てみると、身のまわりにあるものって、意外と単純な形でつくられているということがわかるんじゃないでしょうか。単純な形で描いていても、そのものの特徴となるポイントだけおさえれば、相手にはちゃんと伝わると思いますよ」
絵が苦手な私でも、丸や四角なら描けます。例えばゾウを描くときは、顔を丸、体を四角く描き、大きい耳や長い鼻など特徴的な部分をつければ……ゾウに見えなくもないかも!?
■線はまっすぐ、ていねいに
最後は、デザイナーをしているAさん。自分の経験もふまえ、一番基本的で、でもなかなか意識できていない部分を教えてくれました。
「芸術的な絵を描くという場合には当てはまらないですが、相手に伝えるような絵を描く場合の基本は『ていねいに描くこと』。
あたりまえだと思われるかもしれないですが、意外と重要だと思います。
線を1本描くにしても、ぐにゃっとなった線とまっすぐな線では、印象が違いますよね。絵は基本的に線の寄せ集めですから、これを気をつけているだけで随分変わるんじゃないかと思います。
実は、私は字がすごくヘタで、よく読めないと言われるんです(苦笑)。それで、練習していた時期があるのですが、字もまっすぐな部分はまっすぐに、まるくなるところはまるく、ゆっくりていねいに書くと、『読めない』ということは少なくなるんですよね。
これは、きっと絵も一緒なんじゃないでしょうか。まっすぐなものをあらわしたいなら、しっかりまっすぐ描く。まるい物を描きたいならきれいな丸を描く。
そんなふうに気をつけていくことで、相手に印象が伝わりやすくなるんじゃないかと思います」
基本的なことですが、サッと描こうという意識が働いて、意外とできていない人が多いのでは?先ほどの「単純な図形で描く」ことと合わせて実践してみると、よりわかりやすい絵が描けるかもしれませんね。
本当に「うまい!」と言われるような絵を描きたい場合は、模写をしたり、たくさん描いたりと努力が必要だとおもいます。でも、第三者がわかるというレベルの絵であれば、ちょっと意識をかえるだけで描けるようになるのかも。どれも今日から試せるようなことなので、早速私も実践してみたいと思います。
(OFFICE-SANGA 梅田丸子)