最初にハッとしたのは、及川光博ワンマンショーだった。我らがミッチー、煌びやかなスパンコールにマントを羽織り、ハイヒール厚底ブーツでキレッキレに踊り狂う。そして曲間のMCタイムに照明でめいっぱい明るくした客席を覗き込み、「みんな、今夜はおめかししてきたー!?」とファッションチェックを始めたのである。新譜のテーマに合わせて着飾ってきたベイベーたちが、「はーい!!」と元気に挙手をする。
ところが私はその日、他のライブ、たとえばTHE BOOMや東京スカパラダイスオーケストラの現場に行くのと同じ機能性特化の戦闘服だった。汗だくになったらすぐ脱ぎ飛ばせる速乾性素材のトップスをスポーツブラに重ね、ヘドバンしても乱れないよう髪を括り、首にタオルを巻いている。野外フェスと違って帰りの着替えまでは用意していないが、明るい会場で硬直してしまった。みんな、おめかししている……!
次にハッとしたのは、ミュージカルを観に行ったとき。
平日の夜に職場から直行したので、度数を弱くしたデスクワーク用の眼鏡を掛けていた。化粧室で度の強い使い捨てコンタクトレンズを装着する。急にガツンと視力が向上して、準備万端。これなら推し俳優・石川禅の一挙手一投足をびたいち見逃すまい。