暑い夏には熱い物語を。【TheBookNook #2】
文:八木 奈々
写真:後藤 祐樹
皆さん、最近、胸が熱くなるような想いをしましたか?
大人になると、子供の頃に比べ毎日の生活の中で心を動かされる機会が少なくなります。平凡な毎日の繰り返しでつまらないなと感じているなら、この夏だけは騙されたと思って、じっくりと本の世界と向き合ってみてください。読み終わる頃には、来年の夏が待ち遠しくなっているかもしれません。
※ 画像はイメージです。
来年の夏も待ち合わせしたくなるような“夏に読みたい/夏を感じる小説”を今回は紹介させていただききます。
生まれ変わりを信じる少年の“ある夏休み”を舞台にした物語です。登場人物それぞれがどこか怪しく、読み進めるにつれてだんだんとその違和感が私達読者を襲ってくる、いい意味で不快感MAXの物語です。
疑問を抱かせられる場面も多いのですが、最終的に「そうだったのか」と、腑に落ちると同時に、ブルっと全身寒気に襲われます。
私のもうひとつの夏休みを、皆さんも、ぜひ。
言わずと知れたSFの金字塔(きんじとう)ともいえるこの作品。1956年出版にも関わらず、古さを感じさせず、今もなおさまざまな媒体で紹介され続け、年代問わず多くの人を魅了しています。
私がこの本と出会ったのは中学一年生のとき。人気のSF小説として書店で紹介されており手に取りました。はじめは冷凍睡眠、タイムトラベルといったSF要素に目がいき、当時は思い描いていた作品を読めたことに満足感を抱いていたのですが、大人になって読み直してみると、SFとして括ってしまうにはもったいない人間的な要素を多く感じ、表紙から受けるイメージさえも大きく超えた感動を与えてくれました。
60年以上経っても色あせない輝きを、ぜひ堪能していただきたいです。
青春真っ只中の10代の主人公を描く4つの物語。あと少ししたら、大人としてひとりで人生を歩まなくてはならない。もう戻ることはできない。分かってはいるけれどいまこの瞬間は何者にもならず仲間とただ笑っていたい。思春期を生きる主人公たちの心の葛藤と10代最後のきらめきを閉じ込めたような一冊。
1990年代出版の作品のため時代や性差の違いが感じられる反面、時代が変わっても少年少女の抱く焦燥は変わらないという現実を突きつけられます。
何より、いつかは忘れてしまうような一瞬の感情や光景を掬いあげている鷺沢さんの言葉は子供にも大人にも真っ直ぐに作用します。ぜひいろいろな年代の方に手に取って頂きたい一冊です。
夏に読みたくなる作品、まだまだ沢山ありますが、今回は“今夏の私”が読みたくなった三作品をご紹介させていただきました。
冷たい麦茶でも飲みながら「 夏」の暑さを全身に感じて読書するのはとても気持ちの良いものです。ぜひ、暑い夏だからこそ楽しめる熱い物語を皆さんに味わっていただきたいです。
皆さんの夏がより濃く色づきますように。
今連載は、書評でもあり、“作者”とその周辺についてお話をする隔週の連載となります。書店とも図書館とも違う、ただの本好きの素人目線でお届けする今連載。「あまり本は買わない」「最近本はご無沙汰だなあ」という人にこそぜひ覗いていただきたいと私は考えています。
一冊の本から始まる「新しい物語」。
「TheBookNook」は“本と人との出会いの場”であり、そんな空間と時間を提供する連載でありたいと思っています。次回からはさらに多くの本を深く紹介していきますのでお楽しみに。
写真:後藤 祐樹
皆さん、最近、胸が熱くなるような想いをしましたか?
大人になると、子供の頃に比べ毎日の生活の中で心を動かされる機会が少なくなります。平凡な毎日の繰り返しでつまらないなと感じているなら、この夏だけは騙されたと思って、じっくりと本の世界と向き合ってみてください。読み終わる頃には、来年の夏が待ち遠しくなっているかもしれません。
※ 画像はイメージです。
来年の夏も待ち合わせしたくなるような“夏に読みたい/夏を感じる小説”を今回は紹介させていただききます。
1.道尾秀介(みちおしゅうすけ)『向日葵の咲かない夏』
生まれ変わりを信じる少年の“ある夏休み”を舞台にした物語です。登場人物それぞれがどこか怪しく、読み進めるにつれてだんだんとその違和感が私達読者を襲ってくる、いい意味で不快感MAXの物語です。
疑問を抱かせられる場面も多いのですが、最終的に「そうだったのか」と、腑に落ちると同時に、ブルっと全身寒気に襲われます。
何度読み返しても飽きがこない道尾さんの技法がとにかく素晴らしく、思い出しただけでもぞわぞわする、なんともいえない読後感は唯一無二で、きっと来年の夏も、私は、この本を手に取ると思います。
私のもうひとつの夏休みを、皆さんも、ぜひ。
2.ロバート・A・ハインライン『夏への扉』
言わずと知れたSFの金字塔(きんじとう)ともいえるこの作品。1956年出版にも関わらず、古さを感じさせず、今もなおさまざまな媒体で紹介され続け、年代問わず多くの人を魅了しています。
私がこの本と出会ったのは中学一年生のとき。人気のSF小説として書店で紹介されており手に取りました。はじめは冷凍睡眠、タイムトラベルといったSF要素に目がいき、当時は思い描いていた作品を読めたことに満足感を抱いていたのですが、大人になって読み直してみると、SFとして括ってしまうにはもったいない人間的な要素を多く感じ、表紙から受けるイメージさえも大きく超えた感動を与えてくれました。
60年以上経っても色あせない輝きを、ぜひ堪能していただきたいです。
3.鷺沢萠(さぎさわめぐむ)『少年たちの終わらない夜』
青春真っ只中の10代の主人公を描く4つの物語。あと少ししたら、大人としてひとりで人生を歩まなくてはならない。もう戻ることはできない。分かってはいるけれどいまこの瞬間は何者にもならず仲間とただ笑っていたい。思春期を生きる主人公たちの心の葛藤と10代最後のきらめきを閉じ込めたような一冊。
1990年代出版の作品のため時代や性差の違いが感じられる反面、時代が変わっても少年少女の抱く焦燥は変わらないという現実を突きつけられます。
何より、いつかは忘れてしまうような一瞬の感情や光景を掬いあげている鷺沢さんの言葉は子供にも大人にも真っ直ぐに作用します。ぜひいろいろな年代の方に手に取って頂きたい一冊です。
■暑い夏に、熱い物語を
夏に読みたくなる作品、まだまだ沢山ありますが、今回は“今夏の私”が読みたくなった三作品をご紹介させていただきました。
冷たい麦茶でも飲みながら「 夏」の暑さを全身に感じて読書するのはとても気持ちの良いものです。ぜひ、暑い夏だからこそ楽しめる熱い物語を皆さんに味わっていただきたいです。
皆さんの夏がより濃く色づきますように。
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■「TheBookNook」について
今連載は、書評でもあり、“作者”とその周辺についてお話をする隔週の連載となります。書店とも図書館とも違う、ただの本好きの素人目線でお届けする今連載。「あまり本は買わない」「最近本はご無沙汰だなあ」という人にこそぜひ覗いていただきたいと私は考えています。
一冊の本から始まる「新しい物語」。
「TheBookNook」は“本と人との出会いの場”であり、そんな空間と時間を提供する連載でありたいと思っています。次回からはさらに多くの本を深く紹介していきますのでお楽しみに。