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行きたい国に思いを馳せて【TheBookNook #3】

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文:八木 奈々
写真:後藤 祐樹

皆さんは“海外小説”に触れたことはありますか?

日本の作家さんが対象の国を舞台に書いた物語でも、旅行をした方の体験記でもない、現地の作家さんが書いた物語。その文章に現れるその国の“らしさ”。

「こんなときにこんなこと考えるんだ」とか「こんな見方をするんだ」など、さまざまな文化の違いをより多く感じられるのは文章で構成される小説ならではです。登場人物の名前がカタカナで頭に入りづらいとか、たとえが分かりにくいなど、外国小説には独特のハードルもありますが、一度ハマってしまえば抜けられないほど面白いのも海外小説。

行きたい国に思いを馳せて【TheBookNook #3】


写真はイメージです。

次の休日は、“世界”を片手に、ゆっくり時間をかけながら、いろいろな国を巡ってみませんか?
今回は日本にいながら小説を通して世界を旅する「海外小説」を紹介させてください。

1.【フランス】サン=テグジュペリ『星の王子様』

行きたい国に思いを馳せて【TheBookNook #3】


世界百数十の言語に訳され、聖書とも比較される、誰もが一度は耳にしたことのあるこの作品。

“大切なものは目に見えない”
“この世で唯一のバラ”

……など、数々の有名なセリフがちりばめられていますが、原文を見直すと、より深く強い作者のメッセージが見えてきます。


児童書に分類される作品ですが、大人になってからこそ、何度も、読み返してほしい一冊です。読んだ回数だけ新しい気づきがある『星の王子様』。忘れてしまっていたのか、忘れたフリをしていたのか、“本当に大切なこと”を、そっと、気づかせてくれる作品です。

2.【カナダ】モンゴメリ『青い城』

行きたい国に思いを馳せて【TheBookNook #3】


“赤毛のアン”でよく知られているモンゴメリの隠れた名作。正直、物語の前半は鬱々とした場面の連続で気が滅入ってしまいがちなのですが、どうか、どうか、中盤まで我慢していただきたいです。

“余命宣告された主人公”という使い古された一見陳腐にすらみえるテーマですが、二転三転、本当に最後の最後まで先が見えないラブ・ロマンス。しっかり恋愛描写を描いている一方で、あくまでもメインは主人公の成長にあるので、甘すぎる恋愛小説が苦手な人にもおすすめです。カナダの美しい自然の描写もとても魅力的です。


3.【オーストラリア】トレント・ダルトン『少年は世界をのみこむ』

行きたい国に思いを馳せて【TheBookNook #3】


世界の住みやすい都市としても印象強いオーストラリア。良いイメージの裏側で、実は問題となっている麻薬密売や暴力に関する社会問題。この作品はそんなオーストラリアで2019年に一番売れた小説だといわれています。

物語のおよそ半分は実話だという本作には衝撃的な描写もありますが、ちょっとした風景、僅かな心の動き、流れてくる音楽、テーブルの上に置かれた食べ物、そして主人公の空想の産物さえも細やかな表現で描かれており、まるで自分自身が“そこ”に生きているかのように感じられます。

色や情景が浮かんでくる文章と、爽快な伏線回収もさることながら、特にラスラの畳みかけるところと標題の章はグッと胸に迫るものがありました。

■行ってみたい国の物語で素敵な旅の思い出を


他にも紹介したい海外小説は沢山ありますが、今回はそのなかでも、特に印象に残っている三作品をご紹介させていただきました。まずは“今”、皆さんが行ってみたい国が舞台の小説から、手に取ってみませんか? きっと素敵な旅の思い出ができることと思います。

↓ 前回までの記事はこちらから ↓

【TheBookNook #1】

行きたい国に思いを馳せて【TheBookNook #3】

■【TheBookNook #2】

行きたい国に思いを馳せて【TheBookNook #3】

■「TheBookNook」について


今連載は、書評でもあり、“作者”とその周辺についてお話をする隔週の連載となります。
書店とも図書館とも違う、ただの本好きの素人目線でお届けする今連載。「あまり本は買わない」「最近本はご無沙汰だなあ」という人にこそぜひ覗いていただきたいと私は考えています。

一冊の本から始まる「新しい物語」。

「TheBookNook」は“本と人との出会いの場”であり、そんな空間と時間を提供する連載でありたいと思っています。次回からはさらに多くの本を深く紹介していきますのでお楽しみに。

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