「猫」を取り巻く純文学。【TheBookNook #8】
正直読むのにはかなり時間がかかってしまったのですが、不思議なもので、読み終え振り返ってみると、これは物凄く面白いかもしれない……と思わされました。
ぜひ、『吾輩は猫である』を読んだあとに続けてこの作品に触れてみてください。きっとあなたも私と同様、どこまでが漱石で、どこからが奥泉光か分からなくなるでしょう。
2.越谷オサム『陽だまりの彼女』
10年ぶりに中学時代の幼馴染と偶然出会い……というどこにでもありそうな真っ直ぐな恋愛小説。切なくて残酷だけれど、明るくて甘く、胸焼けするほどベタ甘な恋愛描写が続くため、つい飛ばし読みしてしまいそうになりますが、どうか一文字も逃さずに読み進めてみてください。驚愕とも、呆気ないともとれる物語の結末と、後に気づく構成力に、見事なまでに振り回されます。正直、好き嫌いが大きく分かれる作品かもしれません。私も学生時代に初めて読んだときは感情移入できず本を閉じてしまいましたが、今、時を経て、ふと大切な人を思い出すようにこの本に会いたくなるときがあります。
なんとなく、ただ会いたい人に会いに行くように。読後は、あなたの大切な人が、ひとり増えるかもしれません。
3.小川洋子『猫を抱いて象と泳ぐ』
少年がチェスと猫に出会い、たくさんの人と心を繋げていく、静謐で美しくどこまでも慈愛に満ちた本作品。