ご褒美チョコと一緒に味わう恋の物語【TheBookNook #17】
そんな三十路女性が主人公の今作品。親友の妊娠騒動をきっかけに、事態は思わぬ方向に向かうのですが ……。主人公の焦りや悲しみをまるで同じ空間にいるような温度感で味わえます。あえてこの物語を言葉を選ばずに表すなら、 “愛すべきクソ〇ッチ作品 ”。
理解できないはずなのに怖いほど共感できてしまい、不覚にも少女漫画を読んでいるかの如くキュンキュンしてしまいました。
関西弁で描かれた文体と相反するフランス小説のような空気間。テンポのいい会話に惑わされ楽しく読み進めていると後半、心に物凄い傷を背負わされます。
何より驚いたのは、この物語が描かれたのが昭和48年ということ。
時代を感じさせぬほど感性が現代的で、それでいて日本的な湿気を少しも感じさせません。その証拠に、時空を超えて今現在 95歳となった“彼女”に何度もキュン死にさせられそうになりました。
最初から最後まで主人公に振り回され、読後は息切れさえ覚えましたが、血液と共に全身に流れ込んでくるような田辺先生の文章が本当に魅力的で、タイトルにある「言い寄る」がより一層味わい深く感じました。 誰かに “言い寄る”っていいなあ……。