ご褒美チョコと一緒に味わう恋の物語【TheBookNook #17】
読後は、ちょうどこの物語の分岐点を指示しているタイトルとその装丁を眺めながら、悲しくも美しい結末を暫く嚙み締めていました。
人間って面倒くさくて美しい……。
3.有川浩『レインツリーの国』
“忘れられない一冊の本 ”がきっかけでネットで知り合った男女。 “この人の紡ぐ言葉が好き ”という感情で繋がったふたりは次第に関係を深めていきます。会いたいと願う男性に対し、それを頑なに拒む女性……その理由が明らかになってから坂道を転がるようにグイグイと物語の世界に惹きこまれていきました。
ふたりの間に立ちはだかる問題は決して小さくはなく、それどころかことは大きくなるばかり。お互いがお互いの苦しみを100%理解できないのはどんな境遇であっても同じですし、そんなの頭では理解しているはずなんです……でも。
「ハンデなんか気にするなって言えるのはハンデがない人だけ」……良かれと思って言った言葉も受け取り手によっては鋭い刃物でしかないことがよくわかります。
痛みや悩みに貴賎はないと気づいた後、ようやくお互いに言葉で向き合えたふたりに、読後、私は、“あなたも大丈夫だよ”と心ごと抱きしめてもらえたような感覚になりました。