本選びのすゝめ【講談社編】【TheBookNook #23】
登場する3人の女性の性格がどこか似ていることに気持ち悪さを覚えた前半から、納得の後半。すぐ横にいる人は異星人と似て非なるものという比喩表現だと考えると、怖いほどスラスラと“日常”に物語が入ってきます。
そう、日常に。
そんな現代の生きづらさとSF要素が絶妙に絡みあい、エンタメ性と批評性を兼ね備えたこの作品。私達にとって“普通”とは何なのでしょうか。
私は、あなたは、あの人は、“普通”なのでしょうか。ただひとつ言い切れることは、この物語がまぎれもなく今の日本の話であるということ。そう、宇宙人も含めて。
2.五十嵐津人『不可逆少年』
デビュー作『法廷遊戯』で話題となった弁護士作家、五十嵐津人氏の2作目となる本作品。“殺人犯は13歳”という帯と、印象的な装丁に惹かれ購入しましたが、大当たり。いや、考え方によっては最高の大はずれかもしれません。
少年法の理念と運用の間に横たわるジレンマの存在は昨今のニュースなどでも広く知られていますが、五十嵐津人氏の視点はそこに留まりません。未成年である犯人の異常性や狡猾さをクローズアップしていくのかと思いきや、事件そのものよりもそれを取り巻く人間の感情が主題となって物語は進んでいきます。