雨の日に酔いたい【TheBookNook #24】
文:八木 奈々
写真:後藤 祐樹
梅雨や台風、ゲリラ豪雨など、年間を通して雨の降る日は幾度かあります。恵みの雨という一面がある一方で、憂鬱な気分になったり、外に出るのが辛くなる人も多いのではないでしょうか。
でも、寂しいときも嬉しいときも、そのときの心の向きに寄り添ってくれる、何者にでもなってくれるのも、雨。騙されたと思って、雨の音に耳を傾けながら本を開いてみてください。雨はときに、小説のなかの決まった物語さえを、大きく変えていきます。
なぜ作者はここで雨を降らせたのか……。物語のなかにある“雨”の意味を考えて読むのも、描かれていない“雨”を想像して読むのも、楽しいものです。
今回はそんな雨が印象的に描かれている作品を紹介させていただきます。
今、降る雨とリンクさせながら読む物語はいつもよりも色濃く映るはず。この機会に、家のなかで楽しめる雨小説に酔ってみませんか。
1.市川拓司『いま、会いにゆきます』
6月の雨の日、亡くなった妻が帰ってきた……記憶は失っているけれど。2004年に実写映画化され、海外でもリメイクされた今作品。病気を抱えた父と息子のもとに訪れた切なくて優しい奇跡の物語。