本選びのすゝめ【幻冬舎編】【TheBookNook #25】
地図も写真もなく、名所がたっぷり載っているわけでもないけれど、ガイドブックを見ているよりもソコに行ってみたくなるし、食べてみたくなる。ほんの少しの想像力をもてば、旅先の空気に触れているような気さえしてきてしまいます。さすが、益田ミリ。
ざっくりとした旅の費用が書かれているのも有難い。まだ知らないはずの旅先のできごとや、ちょっとした呟きに、わかるーっと共感しながら読んでしまう人も少なくはないはずです。
私もいつか、ちょっとそこまで。
2.尾形真理子『試着室で思い出したら本気の恋だと思う。』
高校生の頃、装丁とタイトルに惹かれて購入したこの作品。
路地裏にひっそりと佇むセレクトショ
ップで一着の服を買う5人の女性の短編恋愛小説。
倦怠期や不倫、さまざまな恋の悩みをもつ女性たちが、セレクトショップで繰り広げる“すきま”の時間。同じ試着室の鏡を通して自分の気持ちと向き合っていく主人公たちの物語はどれも驚くほどに前向きで、必死で、少し×××……。
共感できる恋も、できない恋も、どちらにも感情を揺さぶられる二日酔いのような感覚に苛まれると
同時に、暖かい気持ちが全身を駆け抜けました。彼女たちの“その先”が知れないもどかしさからなのか、
結末を委ねられた安心からなのか、次に私が恋をするときは、この短編集のエピローグみたいな恋がしたいと恥ずかしげもなく思えてしまったほど。