イヤミスだけじゃない。沼作家・湊かなえ。【TheBookNook #26】
そして、被害者少女の母親が幼い4人に投げつけた激情の言葉は、彼女たちの運命を大きく狂わせていくのです……。
十字架を背負ったまま成長した4人に降りかかる、悲劇の連鎖。15年間もの呪縛と、衝撃の真相。一度放ってしまった“言葉”は、もう取り消すことはできない。それがその人の一生を狂わせることになっていても……。
ひとつの殺人事件が章ごとに異なる視点からモノローグ形式で綴られているため、読者は物語に置き去りにされることなく読み進めることができます。
湊かなえ氏が描く重圧かつどうしようもない絶望の積み重ねは、なぜか色鮮やか。まるで、真っ赤な彼岸花がびっしりと咲いている中で息が出来なくなっていくみたい……。
暗い物語ではありますが、最後には暗く長いトンネルの終わりが私にも見えたような気がしました。……まあ、見えただけ、なんですけどね。
3.『山女日記』
本作は、8篇それぞれの登場人物が少しずつリンクしていく連作長篇集。さまざまな事情や鬱々とした気持ちを抱えた女性たちが“登山”を通して自己対峙していきます。
頂上に着いたころ、問題が解決していなくても、自分の足元にある小さな花や目の前に広がる美しい景色のもつ力に否応なしに前を向いている女性たちが清々しく、まるで自身の体験かのように物語の中へと引き込まれていきます。