本選びのすゝめ【KADOKAWA編】【TheBookNook #30】
文:八木 奈々
写真:後藤 祐樹
「新潮社」「講談社」「幻冬舎」に続いて第四弾となる、“本選びのすゝめ”。
今回は、文芸のみならず、ラノベや漫画などエンタメにも特化している「KADOKAWA」の魅力をお届けしたいと思います。
少し話は逸れますが、本を好んで読んでいる人ならば、好きな本の傾向が偏ってくるのは至極当然のこと。でも、図書館の返却棚や古本屋でふいに出会う、“好きから少し離れた本”になぜか心惹かれ、読んでみたら期待以上……なんて経験はありませんか?
なんとなく手にした一冊が、お気に入りの一冊になる快感。
そう、本も人も中身が大事。今回は、そんな“本の内面”に私が思わず惚れた「KADOKAWA」の作品を紹介させていただきます。
1. 直島翔『テミスの不確かな法廷』
本作の主人公は、幼いころに発達障がいと診断され、スペクトラム症(ASD)、注意欠如/多動症(ADHD)、の特性をもつ裁判官。
自身の特性と上手く付き合いながらさまざまな事件と向きあっていく新感覚のリーガルミステリーなのですが、よくある“ソレ”とは訳(わけ)が違います。
主人公の視点で描かれた3つの事件が収録されている連作短編集となっているこの作品では、その全編を通して、彼の観点や、衝動を抑えるためのルーティンなど、発達障がいゆえの苦悩が細かく描かれていきます。