心のデトックスの形は人それぞれ。【TheBookNook #31】
文:八木 奈々
写真:後藤 祐樹
理由はないけど、泣きたい日。あなたにもありますか……?
悲しい、寂しい、辛い……誰かに話を聞いてほしいだとか、大きな悩みがあるとか、そんなことではなく、ただ、ほんの少し疲れた日。
目まぐるしく過ぎていった一日の終わりのため息と一緒に、日常とは少し離れた物語の世界に身を委ね、涙を流す時間。
思わず泣ける作品も素晴らしいですが、思わぬ作品で泣いてしまう瞬間もまた、いいものです。今回は、理由の説明はできないけれど……なぜか、読後泣いてしまっていた。
そんな私の心に長く残っている三作品を紹介させていただきます。
泣いてすっきりして笑って、みなさんが明日からもがんばれますように。
染井為人『正体』
凶悪犯か、無実の青年か……。当時27歳の夫と妻27歳、2歳の息子が惨殺された。逮捕されたのは18歳の少年。無実を訴えるも控訴もできず死刑判決を受け……そして脱獄。
この作品は、さまざまな場所で潜伏生活を送りながら捜査の手を逃れ必死に逃亡を続ける彼を追う488日の物語。……彼の本当の目的は。冤罪とは。罪とは……。
何を話してもネタバレになってしまいそうなほど、一瞬一瞬、一文字一文字が“鍵”となっていきます。