物語ってあたたかい…肌寒い季節に読みたいほっこり作品【TheBookNook #34】
文:八木 奈々
写真:後藤 祐樹
夏から秋、冬、と季節が変わり一気に肌寒くなってきた今日この頃。
みなさんが途端に欲しくなるものはなんですか……?
私が今、欲しいのは、あたたかいお鍋にあたたかい飲み物、あたたかい毛布。
そして、あたたかい物語。
今回は寒さでキュッと固くなってしまった心ごと解してくれるような、どこか懐かしく、あたたかい気持ちになれる物語を厳選してご紹介させていただきます。
あたたかいお部屋で、ホットミルクでも飲みながら今日この瞬間まで頑張った自分を甘やかしてあげてください。
1. 西加奈子『舞台』
自分を“演じる”こともある。そんな自分も愛してほしい……。
いつも人目を気にして生きてきたことで本来の自分を見失った主人公が旅行先のニューヨークにて盗難にあうところから物語は始まります。
突然の無一文、携帯もない、英語もままならない、そんな主人公はなりふり構わず死に物狂いでニューヨークの街を徘徊し、徐々に自分を取り戻していきます。
“いやいやそんな奴いないだろ”の一行後に、“あ、自分もこういう思考に陥ることよくあるな……”と青くなるような生々しい人間性の描写。