ケースがあるのではないかと思う。
同じ黒い服を着ていても、その根底に流れる思想はまったく異なるものになる。
「黒さえ着ていれば、おしゃれに見えるから」と言った友人がいたが、それも確かに一理ある。だが、それはボーダーさえ着ていればおしゃれに見える、という安易な考えでボーダーを着ているのと同様、おしゃれに対して消極的な感じがする。
今の日本において、形や素材に気をつけさえすれば、黒を着てはいけないシーンはない。冠婚葬祭や仕事、華やかなレストランでの食事、お家訪問、子供の運動会、山登り……(笑)。黒はいつでもOK――そう考えると黒は便利。
でも、私は50代になって、黒をほとんど着なくなってしまった。
■黒い服は着こなしやすい? 実は難しい色、黒
黒を着るときは、光の反射率が異なる素材をミックスして、組み合わせるようにしている。そうすれば単調にならないし暗くならない。ピカピカ、フワフワ、ツヤツヤ、ガサガサ。革、パテント素材、凝った素材のニット、タフタなど。
40代後半頃からだろうか。黒を着ると、自分でもぞっとするほど、顔色が悪く見えるようになった。黒い服をまとったときは、いつもよりも丁寧にヘアスタイルとメイクを整えないと、「疲れた女」