インド発の世界にひとつだけの絵本『夜の木』は、手にするだけで胸がときめく
2008年の「ボローニャ・ブックフェア」で、優れたデザインの本に贈られるラガッツィ賞を受賞し、世界中の注目を集めたこの絵本。
手にしただけで静かで豊かな力が伝わってくる『夜の木』とは、どんな絵本なのでしょう。
第2版の表紙の木には、リスの姿が見え隠れ。
■絵本『夜の木』には、木にまつわるインドの神話的世界が美しく描かれている
第3版の表紙は「12本の角のある木」。
『夜の木』は、原題を “The Night Life of Trees” といい、中央インドのゴンド民族出身の3人のアーティストが、木にまつわるインドの神話的な世界を描いたものです。
闇夜に光る精霊の宿る木。愛し合う木々。生き物との関わり。
昼間は何も語らずそこにいる木々が、夜のしじまの中で見せる不思議な横顔と、どこか懐かしい世界の始まりの頃の物語。黒い紙の上に広がる鮮やかな木々は、大胆さと繊細さがあいまった独特の力強さを放ち、ページをめくるたびに見る者の心を引きつけて放しません。
とはいえ高尚で近寄りがたいわけではなく、時に優しく時にユーモラスな語り口で、読み手の五感をゆさぶる絵本なのです。
――絵本が「五感」