結局のところ、コートは何着あれば十分? 2着で乗り切った冬と、20着で過ごした冬
■なぜ女はコートを何枚も持つのだろう?
コートは何のために着るのだろう?
答えは明確。「防寒」のためだ。
防寒のためならば、冬の間、コートは一着でいいはずだ。
けれど私もそうだが、多くの女性は何枚もコートを持つ。
物欲のなせる業と片付けてしまえばそれでおしまいだけれども、多くの女性たちは、コートというアイテムが冬のおしゃれで最も重要なアイテムだと気づいている。
とびきりお気に入りのコートがあれば、一冬のあいだ幸せな気分で過ごせるし、その日のファッションや予定に合わせて複数枚のコートを着分けることができれば、コートの数だけトキメキの時間は増えていく。
さらに多くの女性は気づいている。
着ているコートが、いかに自分という女について多くのことを物語るかということを。
だからこそ、一枚に絞れず何枚も所有してしまうのではないだろうか。
■恋人ができると選ぶコートは変わる?
「恋人ができると、コートを選ぶ基準が変わるわ」と言った友人がいた。
恋人がいない冬は、とにかく暖かく、機能的で汚れが目立たない濃い色のコート。
恋人ができた冬は、待ち合わせやデートのときに、華やかさや清潔感がでるようにと、きれいな色や薄いキャメル色のコート。
そして、「彼が触れるから」という理由で、カシミアなど手触りが滑らかなコートを選ぶのだと。
なるほどと思った。
コートは女の暮らしと人生を表してしまうのだ。
■2着のコートで生きた冬と、20着のコートを着た冬と
私は過去にワードローブを最小限に絞ろうと試みて、コートを2着しか持たなかった冬があった。
1.通勤用のシンプルな黒のウールのロングコート
2.休日用の黒のショート丈のダウンコート
この2着のみ。
実際のところ、一冬過ごしてみてなんら不便はなかった。
ほとんどの生活のシーンにおいて、この2着で十分対応できる。
けれど、ものすごく寂しい思いをした冬だった。
毎日毎日、来る日も来る日も同じ黒いコートを着る日々。
気分が下がる冬になってしまった。
その反動で、およそ20着ものコートを所持していた冬もあった。コートの数と女のトキメキの数は比例する。
黒やグレーのベーシックカラーに加え、綺麗な薄いイエロー、鮮やかなオレンジ、シックなカーキ色などの色とりどりのコートたち。
Aラインのものからトレンチ風にベルトで縛るものまで形もさまざま。
カジュアルなコートも欲しくなり、Pコートやダッフルコートも所持した。
もちろん防寒目的のダウンコートも黒とグレージュ色を揃えた。
コーディネートがぴったり合わせられるので、それはそれは気分が上がり、毎日がとても楽しかった。
けれど、冬が終わり、コート類をクリーニングに出そうと整理を始めたとき、あることに気づく。
なんと、20着のコートのうち、1回か2回しか着なかったコートが半数以上もあったのだ。
■それで実際のところ、必要なコートの数は?
コートの適正枚数というものはある。
20着持っていたとしても、それらを偏りなくまんべんなく着用するわけではない。
それでも、仕事やパーティ、子ども関係の行事、社交、旅行(国内海外含め)、趣味の集まりなど、日々の生活のシーンがバラエティに富んでいる女性ならば、やはりコートは何種類も必要なのだと思う。
ところが、はたして。
当時フルタイムで働くワーキングマザーだった私は、家と仕事場と保育園とスーパーと駅と公園しか行かない日々。そんな日が大半を占める私には、コートは数着で事足りるのではないだろうか?
そこで、
「毎日ウキウキとした気分でコートを着替えられる」
「管理が楽」
「9割の服に合わせられる」
という条件でコートを数着までに絞ってみた。
1.黒のショート丈のダウンコート
2.ネイビーのチェスターコート
3.アイボリーのロングコート
4.キャメル色のPコート
5.ブラウンのノーカラーのベルテッドコート
以上の5着に加えて、春先と晩秋に着るベージュのトレンチコートがあれば、これらで充分生きていけると判断したのだ。
当然だけれども、この◯着あればいいという数字は、人によってまったく異なると思う。
自分の暮らしのシーンやライフスタイルを、紙に思いつくままに書き出してみる。
次に、それにマッチするコートはどんなものか? をじっくり考えてみる。
さらに自分のワードローブの色と形を再度把握し、どんな色のコートがマッチするかを考える。その分析を経て、5着のコートを選び出す。
(5着じゃ多いという方は3着でもいい)
子どもと公園に行くのに、ネイビーのチェスターコートはそぐわない。
華やかなフレンチレストランでの集まりに、黒いダウンではちょっと悲しい気持ちになる。
フットボール観戦にはダッフルコートが合うんじゃないか? とか、初詣にはどんなコートがいいだろう? とか、スキー&温泉旅行に行くにはリラックスできるコートがいいな、とかそれぞれの冬の楽しみな行事にマッチするコートを考えてみる。
いろんなイベントや行事に最適なコートを選びつつ、収束・統合すると5着になる、というのが私の結論だった。
義母が18年前に、ロンドンの本店で買い求めたというバーバリーのコート。
私が譲り受けることになった。大切にしたい永遠の定番コート。
■ダウンコートを捨てた理由
5枚のコートをスタメンに認定。
けれどそれでメデタシメデタシ、とはならなかった。
子どもたちが大きくなり、もう休日に公園へ行かなくなった頃、下の子を「抱っこ」することも、もうないだろうな、と気づいた年、私は古いダウンコートを処分して新しく買い足すことはしなかった。
ダウンがこの上なく便利なアウターであることはよくわかっている。
けれど、通勤ではダウンを着ないと決めているので、もはやダウンを着るのは近所のスーパーに行くときと年末年始恒例のスキーに行くときだけになっていたのである。
転職して通勤着が変わると、合うコートも変わった。
年齢と共に似合う形、デザインも当然変わった。
暮らしのスタイルが変わると、必要なコートも変わっていくんだ……。
そのことに気づいた私。
そこで、5枚という所持数はキープしつつ、毎年、コートの見直しを行うことにした。
その年その年で、自分の暮らしのライフスタイルと、自分の気分と世の中の流行を鑑みて、クローゼットに吊るされているコートを1枚だけ刷新する。
毎年、どのメンバーが解雇され、どんなルーキーがスタメン入りするか、シビアな5つのコート枠の争奪戦が繰り広げられることに。
こうして一冬の間、5枚のコートで十分楽しめて、ウキウキする時間が毎年過ごせるようになったのだった。収納スペースとクリーニング代にも無駄がなくなった(笑)。
10年以上着続けているUNTITLEDのアイボリーのコート。
私のクローゼットにて毎年行なわれるシビアなコート総選挙においても、5つの枠にしぶとく生き残っている。
別名「褒められコート」。
■人生に必要なコートは刻々と変わる
女性が冬のはじめにコートを選ぶとき、探すとき。
自分の中にどんな思考が生まれるか? 冷静に向き合ってみる。
「これ、暖かそうだわ。温泉に着ていこう」
「これ着て年末の同窓会に行ったら、褒められるんじゃないかしら?」
「これ着て待ち合わせしたら、きっと彼は私に惚れ直すわ(単なる妄想)」
「これ着たら、仕事ができそうな女に見えるかも?」
さまざまな思いが複雑に絡み合い、自分の中に生まれてくるはず。
その年、その年でその思いは刻々と変わる。
だからこそ、毎年新しいコートが必要なのだ。女には。
毎年コートを新調する言い訳としてこんな理屈をこねてみる。
でもそれでいいではないか。
「新しいコート」ほど、女にトキメキを与えるものはない。
「新しい恋」を除いては。
今年も新しいコート、探しにいこう!
※こちらは2017年10月27日に公開した記事内のリンク切れなどを修正したうえで再掲載したものです。