ロングからショートボブになったら、女度の高い服が似合うようになった
■ロングヘアかショートヘアか。女は永遠にその間で揺れる
女は、親に髪を管理される期間を過ぎた10代はじめから、自分の意志で髪の長さと形を選び取る。たかが髪型、髪の長さ。でも実はそこには「どんな女でいようか」「どんな生き方をしようか」という大きな選択と意志が垣間見える。
毎朝くるくるドライヤーと格闘して、聖子ちゃんカットにしていた高校生時代。
誰もが何の疑いもなく、お揃いのワンレングスのストレートヘアにしていたバブル時代。
女らしい空気をプンプン発散させて、とにかく異性にモテたいという野心(?)に燃えて、長いゆる巻きロングにしていた時代。
バッサリ短くしよう!と思い立つも、恋人の「長い髪の女の子っていいよなぁ」というつぶやきをキャッチし、切るに切れなくなった経験を持っている女は多いはず。
しかし、怒涛の子育て期に入ると、髪が長いか短いかの問題なんてもはやどうでもよくなる。
自分の髪をいじる時間どころか、顔さえも満足に洗えない日々。美容院に行く暇などどこにあるのか?という多忙さ。そうなると、とにかく長くしてひとつにゴムで結わえまとめる、というスタイルになった。
長い髪は便利だ。
シャンプーと乾かすのは多少時間がかかるが、ボサボサでもシュシュでひとつに縛ったり、ハーフアップにしてクリップでまとめたり、夜会巻コームできりっとアップにすれば、「髪をきちんと手入れしている」感じが十分に出せる。
美容院に1年くらい行かなくても問題なく生きていける。その楽ちんさに味をしめ、私はしばらくの間、ずっと長い髪で通していた。
ところが、40代後半になり、長い髪をただ垂らしただけの「シンプル」な髪型が、清潔感や清楚からは程遠い、むしろ不潔感やだらしなさを人に与えているのかも、と気づいた頃から、もう本当に髪をうんと短くした方がいいのでは……と思い始めたのだ。
■長い髪をバッサリ切ろうと決断した日
長い髪をそのまままっすぐに垂らしているスタイルが、「ナチュラル」「飾り気のないシンプルな感じ」「さわやか」というイメージにつながるのは、せいぜい30代くらいまでだと思う。かといって、今まで長い髪だったのが急に短くなると、女らしさを手放して急に老け込んだ感じになるのでは……としばらく髪を切ることは躊躇していた。
ところが、髪をまとめるにも、髪のハリやボリュームがどんどん減ってきたと気づいた日。
さらに頭頂部の頭皮が、何となく髪越しに透けて見えていることに気づいた日の恐怖。
「長い髪は頭皮に負担をかけていて、それが顔のたるみにもつながっている」という美容師さんの衝撃発言を聞き、ついにバッサリ切ることを決断したのだ。
■どんな服でも似合う髪型にしてほしいとオーダー
髪を切るとき、美容師さんにお願いしたのは、「極端に前衛的でなく、あくまでコンサバなファッションも似合うショートボブにしてほしい」ということ。
さらに、「どんなファッションでも違和感なく似合う髪型を」とオーダー。
20年以上私の髪を切り、その期間、私のファッションを100回以上見てきた彼は、私の服のスタイルをよく理解している。
デニムも履き、ワンピースも着る。カジュアル服もあり、かっちり服もあり。ハイヒールもエンジニアブーツも履く私のファッションを考えながら切ってくれたのである。
その結果、少し前下がり気味で表面のみレイヤーを入れた短めのボブになった。
ストレートにブローするとシンプルなカジュアルが似合う。
アイロンやホットカラーでキツめに巻けば、ツイード素材の膝丈スカートのスーツが似合うような保護者会ママの髪型になる。まとめ髪もぎりぎりできる。
いろいろアレンジできるようにと、適度な長さを残しつつ、見た目はショートボブ、という汎用性の高い髪型にしてくれたのだ。
■髪を切って似合うようになったファッションとは
髪を短くして驚いたことがある。それは、50代になって避けてきた「女度の高いファッション」がすんなりと似合うようになったことだ。
ペンシルタイトスカートにハイヒール、身体に沿ったニットワンピース、透け感のあるブラウス、といった女度が高すぎて胸やけがしそうなスタイル。50代になり、そういった服はもうそろそろやめよう……と諦めていた矢先。
髪がキュッと短くコンパクトになったことで、首より上の糖度が減り、辛さがアップ。それにより、首から下に多少甘いものがだぶついても、上手くバランスが取れるようになったのだ。そして、ロングのゆる巻き髪や夜会巻でアップにまとめていたときには、どうにもこうにも似合わなかった「トレンド寄りのカジュアル」。それも見事に似合うようになった。
私が思うに、「ロングヘアに似合うファッション」「ショートヘアに似合うファッション」という区分けは難しいし、できたとしてもあまり意味がないと思っている。
ボーイフレンドデニムにゆるめなボーダーのTシャツ、という男の子のようなファッションにショートカットだと、男か女かわからない雰囲気になる可能性がある。
逆に、ピンクの花柄のミニのワンピースにロングのゴージャスな巻髪は、糖度が高すぎてちょっと嫌味を感じるファッションになる危険がある。
以前の記事で「甘辛MIXのコーデとは、複数のアイテムで甘さと辛さのバランスを取ること」という内容を書かせていただいたが、髪型もファッションアイテムの一部と捉えれば、この髪型と服の「甘辛バランス」を取ること。これが「髪型に似合う服の考え方」なのではないかと思っている。
よく「ミディアムのボブヘアはどんな服でも似合うから、ファッションを選びやすい」と言われるが、それはミディアムのボブが甘くも辛くもない、「中性の性質」を持つからだ。
■服をどんなに買い替えても、ずっと同じ髪型だと旬な空気は出ない
おしゃれな友人が言う。
「髪型が何十年とまったく変わらない人って、どんなに洋服や小物を毎年たくさん買っていても、どこか古臭い感じがする。
頑なな感じがする」と。
それって……もしかして私もそうだったのかも……?と思わず冷汗がでた。
服を買い替えるよりも、美容院にマメにいくこと。これが、女がいつも旬の空気をまとうコツなのかもしれない。
半年に一度という、ご無沙汰な美容院の通い方だった自分を反省し、これからは2カ月に一度は通おう。
また友人はこうも言う。
「年を取れば取るほど、いかに日常的にマメに美容院に行き、髪にお金と時間をかけているかで、その人の暮らしのゆとりと女度がわかる」と。
豊かな暮らしを送っている女性は間違いなく髪に気をつかっている、と言う。
60代、70代になってからの方が、女としての志が髪に如実に現れるということ。
「もう、どうでもいいのよ」と思ったらそこで女は終わり。潔くベリーショートにするもよし、白い髪を染めずにナチュラルな銀髪にするもよし。
けれど、「自分で考えて選び取り、愛情を持ってメンテナンスをしている髪型」を、自信を持って保っている女でありたいのだ。
私の場合、第一優先事項は「朝晩の髪をいじる時間が最小限で済む髪型であること」という条件。
今のところ、毎朝乾いた状態の髪に、大き目のホットカラーを数個巻き、すぐはずすだけ。
ふんわりナチュラルな内巻きのショートボブになりこれまた楽ちん。でもちゃんとスタイリングしたように見えるのが気に入っている。
「手間がかかった髪」に見えるように気を配ること。これほど女がまとう空気を良くするものはない。
流行の服より靴より高級ブランドのバッグより宝石より、手間暇かけた(かかったように見える)髪。
それはいつの時代でも女にとって最強。
「おしゃれな服ですね」と言われるよりも、「高そうなバッグですね」と言われるよりも(笑)、「髪、綺麗ですね」と言われる方が何倍も嬉しいはず。
髪はファッションの一部。バランスを取って髪型もどんどんアップデートしていこう!