女ひとり、深夜の寄席へ【新世界を嗜む】
『DRESS』1月特集は「新世界を嗜む」。ここで定義する新世界とは、未体験の趣味の世界。
思いっきり笑った、感動して泣いた、目標を達成して感動した、のめり込みすぎて時間を忘れていたetc.。趣味を通じて得るさまざまな感情や経験は、私たちの人生をカラフルにしてくれるもの。
「自分の人生にこれがないとつまらない」「これがあるおかげで日々が楽しい」。そんな風に思える趣味はありますか?
ある人はもちろん、ない人も、2018年は新世界に足を踏み入れて、新しい趣味と出会ってみませんか。趣味が自分の生きる世界を広げてくれて、日々を今よりもっと素敵なものにしてくれるはずです。
スポーツ(観戦含む)系、文化系に分けて、趣味に熱中している人たちが、魅力や楽しみ方を愛のある文章で語り尽くします。
ここでは、「落語」という新世界へ飛び込んで楽しむ会社員、サトコさんの例を見てみましょう。
多少なりとも仕事でメディアに関わっている私は、幸せなことに「私はこれが好きなんです!」とアツく語ってくれる人と関わる機会が多い。
ヨガやランニング、習字、料理、手芸、カメラ、アイドル。どんなジャンルでも何かに夢中になっている人は本当に魅力的で、楽しそうに見える。
そんな人の姿を見ていると、ふっと、じゃあ自分は?という気持ちも湧いてくる。
あんなに熱くなれること、今の自分は持っているだろうか……?
新しい世界へ入っていくきっかけは、いまどき珍しい(?)テレビっ子の友人が勧めてくれた落語番組だった。
古典落語に”あえて”映像をつけるという、チャレンジングな番組は、最初流し見(なんなら流し聴き)だったのだけれど、いつのまにか食い入って見入り、毎週欠かさずに見続けるまでになった。
もしかしてこれが、はまっている、ということだろうか。
このときは、自分が”はまっている”という自覚はまるでなくて、そのことに気づいたのも先ほどの友人の「そんなに好きなら寄席に行ってみたら?」の一言がきっかけ。気づきました。ありがとう友人。
新宿で行われている深夜の寄席は、昼と夜の公演と比較して、演者も少なく、そのため料金も1000円とおてごろ。夜9時半開演にもかかわらず、開演の1時間前には、30人くらいの列がすでにできていた。
男女比は男性が若干多いくらいで、スーツ姿の人もいる。
「今日も来ました。がんばってね!」
後ろに並んでいる常連らしいカップルが、チケットを配る女性に声をかけている。
ぼんぼりの灯りが照らす会場に硬い雰囲気はまったくなくて、心なしか若い人が多い。周りを見渡すとみんなどことなく口角が上がっているような気がする。
席は座席とサイドの桟敷に分かれており、桟敷に座った女性ふたり組が慣れた手つきで早速おつまみを広げているのを横目に見つつ、今回は座席の方に座る。
幕が挙がる。あっ、女性だ。さっき表でチケットを配ってくれた人だと思い至る。
「落語は初めてというかたはどれくらいいらっしゃいますか?」と客席に問いかけ。
彼女いわく、女性の落語家は全国で50人くらいいるらしい。
演目は古典落語の「紙入れ」。おかみさんに誘惑された男と女の噺だけれど、どこか色っぽい。
この日の出演は4名で、古典落語は「紙入れ」のみであとは全て新作落語。
演者が若いせいか、テーマも人工知能などバラエティに富んでいる。女性になったり、ロボットになったり、少年時代の自分になったり。
こういう表現もありなんだ!と、素直に驚く。
これは実際に寄席に来て体験しなければ知りようがない、わかり得ないことだ。思い切って来てみて本当によかった。
趣味は、持っていても持たなくても良いものだ。
でも、もしかしたら普段意識していない生活の中に、新しい世界への一歩はあるのかもしれない。今週はまた別の寄席に行く予定。
平日の夜も行ってみたいし、江戸時代の文化にも興味が出てきた。あの落語がテーマのドラマも気になるし、そういえば祖父が落語のカセットを集めていた記憶がある。
扉を開けるとまた次の扉がある。新しい世界を楽しんでいこう。新宿末廣亭「土曜恒例深夜寄席」PM9:30〜11:00 料金1000円新宿区新宿3-6-12
Text/サトコ
思いっきり笑った、感動して泣いた、目標を達成して感動した、のめり込みすぎて時間を忘れていたetc.。趣味を通じて得るさまざまな感情や経験は、私たちの人生をカラフルにしてくれるもの。
「自分の人生にこれがないとつまらない」「これがあるおかげで日々が楽しい」。そんな風に思える趣味はありますか?
ある人はもちろん、ない人も、2018年は新世界に足を踏み入れて、新しい趣味と出会ってみませんか。趣味が自分の生きる世界を広げてくれて、日々を今よりもっと素敵なものにしてくれるはずです。
スポーツ(観戦含む)系、文化系に分けて、趣味に熱中している人たちが、魅力や楽しみ方を愛のある文章で語り尽くします。
ここでは、「落語」という新世界へ飛び込んで楽しむ会社員、サトコさんの例を見てみましょう。
■新しい趣味の見つけかた
多少なりとも仕事でメディアに関わっている私は、幸せなことに「私はこれが好きなんです!」とアツく語ってくれる人と関わる機会が多い。
ヨガやランニング、習字、料理、手芸、カメラ、アイドル。どんなジャンルでも何かに夢中になっている人は本当に魅力的で、楽しそうに見える。
そんな人の姿を見ていると、ふっと、じゃあ自分は?という気持ちも湧いてくる。
あんなに熱くなれること、今の自分は持っているだろうか……?
■無意識にハマる。未知との遭遇
新しい世界へ入っていくきっかけは、いまどき珍しい(?)テレビっ子の友人が勧めてくれた落語番組だった。
古典落語に”あえて”映像をつけるという、チャレンジングな番組は、最初流し見(なんなら流し聴き)だったのだけれど、いつのまにか食い入って見入り、毎週欠かさずに見続けるまでになった。
もしかしてこれが、はまっている、ということだろうか。
このときは、自分が”はまっている”という自覚はまるでなくて、そのことに気づいたのも先ほどの友人の「そんなに好きなら寄席に行ってみたら?」の一言がきっかけ。気づきました。ありがとう友人。
■女ひとり、深夜の寄席へ
新宿で行われている深夜の寄席は、昼と夜の公演と比較して、演者も少なく、そのため料金も1000円とおてごろ。夜9時半開演にもかかわらず、開演の1時間前には、30人くらいの列がすでにできていた。
男女比は男性が若干多いくらいで、スーツ姿の人もいる。
「今日も来ました。がんばってね!」
後ろに並んでいる常連らしいカップルが、チケットを配る女性に声をかけている。
知り合いなのかな?そんなことを考えつつ、寒さがそろそろ厳しくなってきたころ、いよいよ開場。
ぼんぼりの灯りが照らす会場に硬い雰囲気はまったくなくて、心なしか若い人が多い。周りを見渡すとみんなどことなく口角が上がっているような気がする。
席は座席とサイドの桟敷に分かれており、桟敷に座った女性ふたり組が慣れた手つきで早速おつまみを広げているのを横目に見つつ、今回は座席の方に座る。
幕が挙がる。あっ、女性だ。さっき表でチケットを配ってくれた人だと思い至る。
「落語は初めてというかたはどれくらいいらっしゃいますか?」と客席に問いかけ。
手がぱらぱらと挙がり、少しホッとする。
彼女いわく、女性の落語家は全国で50人くらいいるらしい。
演目は古典落語の「紙入れ」。おかみさんに誘惑された男と女の噺だけれど、どこか色っぽい。
この日の出演は4名で、古典落語は「紙入れ」のみであとは全て新作落語。
演者が若いせいか、テーマも人工知能などバラエティに富んでいる。女性になったり、ロボットになったり、少年時代の自分になったり。
こういう表現もありなんだ!と、素直に驚く。
くるくると変わる情景や、ひねった言い回し、だんだんと客席が一体化して近づいていくような感覚がある。
これは実際に寄席に来て体験しなければ知りようがない、わかり得ないことだ。思い切って来てみて本当によかった。
■新しい世界の最初の一歩
趣味は、持っていても持たなくても良いものだ。
でも、もしかしたら普段意識していない生活の中に、新しい世界への一歩はあるのかもしれない。今週はまた別の寄席に行く予定。
平日の夜も行ってみたいし、江戸時代の文化にも興味が出てきた。あの落語がテーマのドラマも気になるし、そういえば祖父が落語のカセットを集めていた記憶がある。
帰省したら尋ねてみよう。漫画も書店で見かけたことはある。読まなければ!
扉を開けるとまた次の扉がある。新しい世界を楽しんでいこう。新宿末廣亭「土曜恒例深夜寄席」PM9:30〜11:00 料金1000円新宿区新宿3-6-12
Text/サトコ