砕け散った彼女の笑顔には、愛と孤独と欲望が詰まっていた。『チワワちゃん』吉田志織
懐かしい日々を振り返るように話す。
■どうして、そんな笑顔ができるの?
いま目の前に座って、言葉を探しながら質問に答える吉田志織に、チワワちゃんの面影はほとんどない。危なっかしくもなければ、向こう見ずでもない、なのに。ときおり刺す瞳の輝きにだけ、役が重なって見えるのが不思議だ。
「私とチワワは、やりたいと思ったことに対しての瞬発力が似てるんです。やると決めたら、目がキランとして、次の瞬間には動いている。たとえば私は地元が北海道なんですけど『あ、明日から東京でやっていこう』と思って、翌日に上京しちゃったんですよね」
チワワちゃんもそうだ。みんなが焦ったり立ち止まったりして、周りを見ながら次にどうするかを考えているとき。
うしろからすごい勢いで走ってきて、みんなを軽々と追い抜きながら『みんな何してるの?行こうよ!行かないの?』と、無邪気にあおる。
「チワワのほうが私よりもっと、なにも考えていません。知っている世界が狭いからなのかもしれないけれど、だからこそ立ち止まらないで、なんにでも飛びつけるんです。素敵なものを見つけたらぱっと動く、本当にワンちゃんみたいな反射神経で」
岡崎京子が描いた同名の原作漫画には「チワワ、どうしてそんな笑顔ができるの?」