砕け散った彼女の笑顔には、愛と孤独と欲望が詰まっていた。『チワワちゃん』吉田志織
というコピーがついていた。映画の台本にも使われていない一節だ。
「でも、どの登場人物が言ったのかもわからないその一言が、すごく私の心に響いたんです。そんな疑問が浮かぶということは、発した人にとってチワワの笑顔は、どこか『うわっ』と感じるものがあったんだと思うから」
そんな人生を送りながら、どうしてそんなに明るく笑えるの? とも取れるし、あれだけ好きに生きていて、どうしてそんな顔で笑うの?とも取れる。だから吉田志織はスクリーンのなかで、現場の一瞬一瞬で、壮絶なほど笑った。
「チワワの笑顔はただ楽しいだけじゃなくて……愛とか明るさとか、孤独とか性欲とか、いろんな全部がごちゃ混ぜになったもの。本人にそんなつもりはなかったと思うけど、生き急いでいるんですよね。だから私も、チワワとして生きる時間を楽しむことで、精一杯でした」
演じきったいまでも吉田志織は、チワワちゃんという女の子に、憧れとかすかな嫉妬を抱えているような気がした。
■苦しむことで、生きていく
花火というには見栄がすぎるし、稲妻というには優しすぎるけれど、とにかく鮮やかな残像を残して、チワワは死んだ。役をとおして、生きることと死ぬことについて感じた想いを、尋ねてみる。