『オレンジと太陽』エミリー・ワトソン インタビュー
英豪両国を揺るがした感動の実話!イギリスが1970年まで行っていた“児童移民”…その真実を明らかにした実在の女性、マーガレット・ハンフリーズの物語。名匠ケン・ローチを父に持つジム・ローチ監督待望のデビュー作で主役をつとめたのは、『奇跡の海』で世界中の女優賞を総なめし衝撃的なデビューを果たして以来、最新作『戦火の馬』まで類いまれな演技力で第一線の活躍がつづく、イギリス出身の名女優エミリー・ワトソンのインタビューをお届けする。
●この映画で描かれている事実を知っていましたか?まったく聞いたことがありませんでした。ほとんど知られていない事実だったと思います。移民の方たちはオーストラリアにいるので、オーストラリアではもう少し知られていたとは思いますが、イギリスでは……。本当に酷い出来事で、何と言っていいかわかりません。今では、両国政府の謝罪があったので、多くの人が知る事実になりましたね。
●実際のマーガレットとは会いましたか?いいえ。
会うべきかどうか長い時間、深く考えました。撮影中、毎日、私は“たぶん私は、彼女に会うべきなのかもしれない”と自分自身に語りかけていました。でも、これまで私が実在の人物を演じた時、現実の人を前にすると、いろんな意味で近づきすぎてしまい、客観的になるのが難しくなってしまったんですね。外見でも、声の出し方でも、強く刷り込まれてしまって、物語を語るためには役立たない場合も多かったんです。ただ模倣しようとしてしまうんですね。でもこれは映画で、これは物語です。模倣とは別のやり方で、役を掴まなくてはいけないんです。
●この役のためにどのようなリサーチをしましたか?まずマーガレット自身の本、それから様々なドキュメンタリーがありました。
ただ私にとって最も重要な部分は、エモーショナルなものであり、それは自分自身が家族や子供を持っていることから生まれてくるものでした。その感情が、この役に自分が入り込む想像力になったと思います。もしも自分の子供が、捨てられ、強制的に国外へ送られ、10年も虐待されたらと考えると、感情を抑えることなんてとてもできません。
●ジム・ローチはどんな監督ですか?撮影の多くは、虐待や親の死に関わるシーンでしたが、ジムは俳優たちがその感情を正しく感じられるように現場をまとめていました。でも「OK、もう1回やろう。今度はもう少し控えめにやってみよう」って、彼はいつも言うんです。これが、彼の持ち味。すべてを適切に、キープする。
この映画にはたくさんの語られるべき事があるのに、それをあの強度でキープするなんて、とても私にはできない。映画を見ればきっとそれが分かると思います。
※オフィシャルインタビューより
作品情報『太陽とオレンジ』
原作:マーガレット・ハンフリーズ著「からのゆりかごー大英帝国の迷い子たち」(日本図書刊行会刊)
監督:ジム・ローチ
出演:エミリー・ワトソン、デイヴィッド・ウェナム、ヒューゴ・ウィーヴィング
4月14日(土)より岩波ホール他、全国順次ロードショー!
(c)Sixteen Midlands (Oranges) Limited/See-Saw (Oranges) Pty Ltd/Screen Australia/Screen NSW/South Australian Film Corporation 2010