「冬の家の」ブランケット展【前編】
スウェーデンの老舗テキスタイルメーカーであるクリッパン社。ブランケットが有名だが、今年の秋冬のブランケットコレクションに皆川 明さんの柄が発表されたそう。皆川さんは、『ミナ ペルホネン』というブランドを率い、東京スカイツリー(R)の制服なども手がけているデザイナーだ。皆川さんとクリッパン社の総輸入販売元であるイーオクト社長の高橋百合子さんがお話されたというトークショーの様子をお届け!
左奥:皆川 明さん 中央が高橋 百合子さん(手前は司会者)
■クリッパン社と皆川さんの共通点
高橋:去年の7月3日、皆川さんの展覧会でお会いしたのが初めての出会いでした。その後、皆川さんご自身がものづくりのお話をされる機会に偶然居合わせまして。お話を伺いながら、「工場とのやりとりを心から楽しんで、素材を大切にしながらものづくりをされている様子が、クリッパンのものづくりと共通しているな」と、思いました。そもそも、皆川さんとの北欧との関わりはいつからなんでしょうか?
■皆川さんと北欧の関わり
皆川:19歳の冬に初めて北欧に行きました。寒い時期に、ラップランドにあるガラス工房に行ったんです。
HOUSE IN THE FOREST
19歳で北欧に行った時の記憶が、(今、46歳なんですけれど)20数年たって、スウェーデンのKLIPPANでブランケットになったのが、感慨深いですね。その時に北欧に行ったのは、ニューヨークやパリといったメジャーな都市ではなく、もっと知らない国に行きたいという好奇心からです。祖父母が輸入家具屋をしておりまして北欧の家具を仕入れていた関係もありました。
■北欧と日本はデザインの出発点が似ている
皆川:北欧の文化や気候風土は、日本と近いと思っています。木の文化があって、木を使うことに対しては長けていて。そういう意味では、デザインの出発点が比較的近い。装飾するよりも、装飾がないところにも美を見つけるといった点も似ています。
■どんな新鮮なことができるだろうか?
高橋:ブランケットのデザインは、基本的にパターンで作ることが多いのですが、今回の皆川さんのデザインはそうではないですね。
皆川:「自分はどんな新鮮なことをクリッパン社にできるだろうか?」というのを考えた時に、繰り返していくモチーフではなく、ブランケットという空間をひとつの絵、キャンバスのように考えて図案を置いていったら…と思いました。コラボレーションをする時には、いつも相手をリスペクトした状態で仕事に臨みますが、彼らにとっての新鮮なことは何だろう? 自分が関わったことで、デザイン的な美しさだけではなく、方法論としても何かできないかな? ということは、常に考えます。
■いいものを作っている工場は“人”がいい
皆川:スウェーデンの工場でファーストサンプルを見た時に、デザインのバランスで、修正したい点があったんです。それを伝えると、担当者は快くOKしてくれました。製造スケジュールはギリギリで待ったなしだったんですけれどね。いいものを作っている工場は、ハード面もいいですが、人がいいです。
クリッパン社 社長のピーター。温かく誠実な人柄が、姿形から伝わってくる
■ギリギリの挑戦を続ける
高橋:一番最初に「HOUSE IN THE FOREST」のデザイン画を見た時に、工場の技術者は「無理かもしれない」と言ったそうです。
皆川:コラボの時は、「工場が力を目一杯使わないとできないかもしれない」、そういうものづくりに挑戦します。多分、普通の(普通のというのも表現がおかしいですが)、情熱が高くない工場は「やったことがないので、できません」で終わるんだと思います。でも、クリッパン社の経営陣は「どうしてもやろう」と言って下さって。
「いい結果とは?」【後編】では、クリッパン×ミナ ペルホネンの秋冬ブランケットの紹介です
文章/楢戸ひかる
左奥:皆川 明さん 中央が高橋 百合子さん(手前は司会者)
■クリッパン社と皆川さんの共通点
高橋:去年の7月3日、皆川さんの展覧会でお会いしたのが初めての出会いでした。その後、皆川さんご自身がものづくりのお話をされる機会に偶然居合わせまして。お話を伺いながら、「工場とのやりとりを心から楽しんで、素材を大切にしながらものづくりをされている様子が、クリッパンのものづくりと共通しているな」と、思いました。そもそも、皆川さんとの北欧との関わりはいつからなんでしょうか?
■皆川さんと北欧の関わり
皆川:19歳の冬に初めて北欧に行きました。寒い時期に、ラップランドにあるガラス工房に行ったんです。
駅からは車に乗ってガラス工房に向かったのですが、雪の中、森を抜けていった時に見た景色が「HOUSE IN THE FOREST」のモチーフです。
HOUSE IN THE FOREST
19歳で北欧に行った時の記憶が、(今、46歳なんですけれど)20数年たって、スウェーデンのKLIPPANでブランケットになったのが、感慨深いですね。その時に北欧に行ったのは、ニューヨークやパリといったメジャーな都市ではなく、もっと知らない国に行きたいという好奇心からです。祖父母が輸入家具屋をしておりまして北欧の家具を仕入れていた関係もありました。
■北欧と日本はデザインの出発点が似ている
皆川:北欧の文化や気候風土は、日本と近いと思っています。木の文化があって、木を使うことに対しては長けていて。そういう意味では、デザインの出発点が比較的近い。装飾するよりも、装飾がないところにも美を見つけるといった点も似ています。
だから日本に住み、日常で感じたことをデザインしていくことは、結果的に北欧の人達の暮らしと、そう離れていないのではないか? と思っています。
■どんな新鮮なことができるだろうか?
高橋:ブランケットのデザインは、基本的にパターンで作ることが多いのですが、今回の皆川さんのデザインはそうではないですね。
皆川:「自分はどんな新鮮なことをクリッパン社にできるだろうか?」というのを考えた時に、繰り返していくモチーフではなく、ブランケットという空間をひとつの絵、キャンバスのように考えて図案を置いていったら…と思いました。コラボレーションをする時には、いつも相手をリスペクトした状態で仕事に臨みますが、彼らにとっての新鮮なことは何だろう? 自分が関わったことで、デザイン的な美しさだけではなく、方法論としても何かできないかな? ということは、常に考えます。
■いいものを作っている工場は“人”がいい
皆川:スウェーデンの工場でファーストサンプルを見た時に、デザインのバランスで、修正したい点があったんです。それを伝えると、担当者は快くOKしてくれました。製造スケジュールはギリギリで待ったなしだったんですけれどね。いいものを作っている工場は、ハード面もいいですが、人がいいです。
そして、温かい。「ブランケットのように、シンプルだけれど、クオリティが問われる作品を作る人柄というのは、こうなんだな」と思いました。そういう雰囲気が工場全体にあって、良い製品を作っているのは、工場からも感じられます。
クリッパン社 社長のピーター。温かく誠実な人柄が、姿形から伝わってくる
■ギリギリの挑戦を続ける
高橋:一番最初に「HOUSE IN THE FOREST」のデザイン画を見た時に、工場の技術者は「無理かもしれない」と言ったそうです。
皆川:コラボの時は、「工場が力を目一杯使わないとできないかもしれない」、そういうものづくりに挑戦します。多分、普通の(普通のというのも表現がおかしいですが)、情熱が高くない工場は「やったことがないので、できません」で終わるんだと思います。でも、クリッパン社の経営陣は「どうしてもやろう」と言って下さって。
こういった工場の熱意とデザインの力が合わさり、いい結果が出たんだと思います。
「いい結果とは?」【後編】では、クリッパン×ミナ ペルホネンの秋冬ブランケットの紹介です
文章/楢戸ひかる