猫が見守る天才ピアニスト『シャイン』【映画ライター渡まち子の「猫目線」映画レビュー11】
◆この映画の猫ポイントはここ! (c)trailfan - Fotolia.com(写真はイメージです)
この映画は、主人公デヴィッドの不思議な独白でスタートします。「僕はネコ。僕はネコだよ。ネコの…、ネコの気持ちが分かる。なぜかな。悲しいネコ。僕は悲しいネコ。ネコって不思議だ。
不思議、不思議、本当に不思議。僕はネコにキスをする。いつもね。塀の上のネコ、いつもキスをする」。この長い長いセリフ、いったいどういう意味なんでしょう? 幼い頃のデヴィッドは、あたたかい愛情を知らず常に父親からコントロールされていました。そんな自分が、塀の上にうずくまって身動きさえできない悲しい猫に思えたのかもしれません。主人公が想像した猫のイメージがそんな不幸な姿だったなんて、猫好きにはちょっと寂しい気がしますね。
でもご安心を。
ちゃんと本物の猫も登場しますよ。英国に留学し、ついに自由を得たデヴィッドの下宿のピアノの上には、グレーと白の長毛の猫がいます。この猫とは、缶詰の食事を分けあって食べるほどの仲良し。オーストラリアに戻ってからも、オンボロのピアノの上にちょこんと乗ったキジ猫の姿があります。これらの猫たちはすべてチラリとしか登場しませんが、最初は悲しい心の象徴だった猫が、最後には、傷つきやすい天才ピアニストを愛らしい姿で優しく見守ってくれている。何だかホッとしました。