猫はさびしい思いをしている人のそばにいる。『すーちゃん まいちゃん さわ子さん』【映画ライター渡まち子の「猫目線」映画レビュー13】
料理好きのすーちゃんが作るおいしそうな料理や、ナチュラルなファッション、のんびりとしたライフスタイルと、見どころも多彩。テイストは日常をさらりとスケッチするような穏やかさですが、内容は単なる癒し系ではありません。だって、独身アラサー女性が頑張って生きるには、ほのぼのばかりもしていられませんものね…。
だからこそ、心が折れそうな時、そばにいてくれる女友達の存在が、本当にありがたいのです。本作に登場する男性キャラのダメッぷりと好対照の、女同士の確かな友情には励まされました。演じる柴咲コウさん、真木よう子さん、寺島しのぶさんら、実力派女優たちがいつもと違う雰囲気で魅せるアンサンブルの妙や、ふっと漏らす本音のセリフ(心の声?)の鋭さも、見逃せません。
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◆この映画の猫ポイントはここ! 自宅でウェブデザイナーの仕事をしている39歳のさわ子さんの家には、ミーちゃんという名前の茶白の猫がいます。
母と二人で、寝たきりの祖母の介護をするさわ子さんは、もし自分が家を出れば母が一人で祖母の面倒を見ることになると思うと、結婚や恋愛に踏み切れません。
そんな時、きままに出歩くミーちゃんを見て「好きな時に出ていけるっていいなぁ…」とつぶやきます。猫の特徴的な性質の“気ままで自由”をうらやむ、さわ子さんの本音が思わず出たセリフでした。
どうやらミーちゃんは完全なインドアキャットではなく、自由に外に出ているにゃんこのようですね。ある時、何日も帰ってこないミーちゃんを懸命に探すと、実は、みんなが心の中で少しだけ負担に思っていたおばあちゃんのふとんにもぐりこみ、寄り添うように眠っているではありませんか!
勝手きままに見えて、一番さびしい思いをしている人のそばにちゃんといる。これこそ、愛猫家なら実感できる、猫の“美徳”だと思うのです。