バカだニャ~、人間って! 『黒猫・白猫』【映画ライター渡まち子の「猫目線」映画レビュー14】
この映画の背景は、監督自身が幼い時から親しんだロマの人々の、陽気で人間味あふれる世界。石油列車ハイジャック事件と結婚式での花嫁脱走劇を軸にした、奇想天外、予測不能の愛と友情の物語が、エネルギッシュに繰り広げられます。
個性的すぎるキャラ、ヘンテコなルックス、カオス(混沌)そのものの物語と、中身はあきれるほどハチャメチャ! ブンチャカ、ブンチャカとにぎやかなジプシー・ミュージックは、実はクストリッツァ監督自身が参加するバンド“ノー・スモーキング・オーケストラ”によるものです。
バルカン半島の伝統音楽をベースに、ロック、ジャズ、スカなどをミックスしたサウンドは、明るさの中に哀愁が漂っていて、映画全体を魅力的に彩っています。わかりやすいハリウッド映画とはひと味違うムチャぶりにあっけにとられるかもしれませんが、この“ドタバタ感”こそがクストリッツァ流の人生賛歌。難しいことは抜きにして楽しんでしまいましょう!
(写真はイメージです)
◆この映画の猫ポイントはここ! この映画の公開時のキャッチコピーは“ニャニがニャンでも愛で突っ走るのよ!”。どうです、これだけでも猫好きの胸に響きませんか? 物語の節々でちょこちょこ登場する黒猫と白猫は、いつも一緒にいて、いわば映画のマスコット的な存在です。人間たちの大騒動をあきれたようにみつめる猫たちは「人間っておかしな生き物だニャ~」と笑っているに違いありません。
猫以外にもアヒルやブタなど、多くの動物たちと、愛すべきおバカな人間たちが入れ乱れるハイテンションの物語は、まさかの展開でハッピーエンドへ。このファンキーすぎる映画のラストでは、2匹の猫たちは結婚式の立会人まで務めるという活躍ぶりでした。
結婚と葬儀を見守る黒猫と白猫は、生と死、幸福と不幸の象徴なのでしょう。「両方があってこそ人生なのさ!」と言わんばかりの猫たちの、達観した表情が実にステキです。