ふわ~っと浮遊感のあるアートで、まどろみのひとときを楽しむ
写真集「幻夢」が連れて行ってくれる桃源郷の究極の癒し“一冊の本を売る店” というコンセプトで、2015年5月にオープンしたばかりの
森岡書店銀座店での湯沢薫さんの個展
「幻夢」を見た時の衝撃は忘れられません。初めて見る写真展なのに、
デジャヴみたいな懐かしさと、自分を取り巻く空気が一瞬にして変容し、どこかへ連れ去られるような未知の刺激に、同時に襲われたのです。ドキドキしました。
湯沢薫(ゆざわ・かおり)
アーティスト。1971年生まれ。18歳からファッションモデルとして活躍。1997年渡米し、San Francisco Art Instituteで、写真、装丁、実験映画を学ぶ。帰国後は国内外の展覧会に参加し、写真、立体、絵画、音楽など、様々な手法で制作活動をおこなっている。
2015年「幻夢」(HeHe刊)出版。
学校に馴染めず、小・中学校とイジメられっ子で地獄を味わい、バレリーナを夢見ながらも、ファッションモデルとして活躍した後、サンフランシスコ・アート・インスティチュートに留学して、初めて自分の居場所を見つけたという薫さん。写真、絵画、立体、音楽と多才に活動する彼女が、最近、ファッションブランド
aoとのコラボレーションで洋服をデザイン。洋服とともに作品が展示されたaoを訪れ、インタビューをお願いしました。
代官山のaoで展示された、紙の上にドライフラワーが散らされた作品の前で
―― サンフランシスコで、初めて自分らしい呼吸ができたんですね。
「そう! 学校ってこんなにおもしろいんだって初めて思えたの。先生もすっごい変で、特に実験映画の先生は光を好きなあまり、8ミリで覗いてるうちに興奮してきて椅子がクルクル回り出して、そのまま走ってどっかへ行っちゃったり(笑)。すごく自由。
でも、作品へのクリティークは厳しいんだけど、そこで初めて受け容れられて。お前はアーティストなんだから、アーティストとして生きなさい、と言ってくれて」
それまでは、モデルゆえに「どうせ趣味なんでしょ」という先入観を持たれるから、普通の人の3倍がんばらないといけないと思っていたのが、渡米後はそういうバイアスがなくなったのだそう。「今でも、くじけそうになるとその時のことを思い出します」と薫さん。
彼女の写真の撮り方は
“シャーマン”そのもの。心に降りてきたイメージ、目の前に漠然と現れた風景を探す旅に出て、同じ風景を見つけたら撮影。時には、夢中で撮影していて崖から落ちてしまったことも。「カメラを持ってると、サルみたいにどこでも登ってっちゃう。カメラを持ってると登れちゃうんです。
撮り終わるとスイッチが切れて、気がついたらすごい上まで登っちゃってて、どうやって下りよう…みたいな(笑)」
そんな命がけの撮影も含め、5年ほどかけて編まれた写真集が
「幻夢」。空想の世界で遊ぶことを教えてくれた亡き父の葬儀場のカーテンからスタートし、生と死の意味を探り、道に迷い、通り抜けると光が射し、花が咲き乱れ、霧が立ち込め、バレリーナの妖精が踊っていたり、目が覚めるとニュートラルな世界が広がり、別れてしまった恋人の面影が浮かんだり、最後は海で新しい旅立ちへ…と、ストーリーが展開していきます。
「人生いろいろあるけど、キレイごとばかりじゃない。でも、必ず
光がある。いい未来が待ってるんだよ、っていうのが裏のメッセージ。かなり前向きです」と、薫さんは微笑みます。彼女の写真に触れて、空想の世界でまどろんでみませんか? 暑かったトンネルを抜ければ、そこはオアシス。新しい季節は、リフレッシュしたあなたのものです。
・黒坂麻衣さん 公式サイト
http://maibou8.wix.com/mai-kurosaka
・湯沢薫さん HeHe
http://hehepress.com/
※文中のイベントは2015年のものとなります。
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