ミステリアスな魅力に満ちた、奇跡のアート・ドキュメンタリー映画 「ヴィヴィアン・マイヤーを探して」
引きこもって溜め込んだ新聞紙に埋もれて暮らした晩年ザンバラ髪に男物のシャツとだぶだぶのコート、足元はアーミーブーツで、愛機
ローライフレックスを首から下げ、ファインダーを上から覗き込み、被写体に体当たりで撮影していたヴィヴィアン。
© Vivian Maier_Maloof Collection © 2013 RAVINE PICTURES, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
彼女が好んで撮るのは、スラム街の人々、泣いている子供、堵殺場など、人間の負の側面を思わせる写真。ただの浮浪者にしか見えない男の写真を購入した、俳優ティム・ロスの「最貧の姿の男なのに幸せそうなんだ」という言葉が刺さります。
© Vivian Maier_Maloof Collection © 2013 RAVINE PICTURES, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
ハッとさせられる視点や構図は、
ダイアン・アーバスや
ブラッサイを思わせますが、長く住まわせてもらっていた部屋には、美術関係の書籍はなく、足の踏み場もないほど新聞が堆積していたとか。
グロテスクで不条理な事件、人間の愚かさが露呈した事件に興味津々だったという彼女には、ジャーナリスティックな感性、作家のカポーティめいた好奇心があったのかもしれない、と思ったり。
© Vivian Maier_Maloof Collection © 2013 RAVINE PICTURES, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
アーティストとしてはアウトサイダーだったヴィヴィアンの人生が、ミステリアスなまま、心の奥底に沈殿して離れません。作品を公表していたら、20世紀の写真史を変えていたかもしれないヴィヴィアン・マイヤーを、この映画を観て、あなたも探す旅に出てみませんか?
「ヴィヴィアン・マイヤーを探して」▼予告編
監督:ジョン・マルーフ、チャーリー・シスケル
出演:ヴィヴィン・マイヤー、ジョン・マルーフ、ティム・ロス 他
2015年10月10日(土) シアター・イメージ・フォーラムほか全国順次ロードショー